【9月6日 AFP】スペイン北部バスク(Basque)地方の分離独立を求める非合法組織「バスク祖国と自由(ETA)」が5日に武装闘争の停止を宣言した背景について専門家らは、幹部が多数拘束されて組織が弱体化するなか、来年の地方選で政治復帰をめざすETAの政治部門「バタスナ(Batasuna)」からの圧力に押し切られたものとの見方を示している。

 ただ、武装闘争停止はバタスナの要求に対する最低限の対応にとどまると見られ、停止宣言に使用された表現や、ビデオに登場したETAメンバーの覆面姿から見ても、ETAが武装闘争を恒久的に放棄する準備はできていないことがわかるという。

■政治復帰めざすバタスナの思惑

 バタスナは、ETAと関連があるとして2003年に非合法化された。しかし、11年の地方選挙で政治復帰を目指しており、今年6月には平和的手段しか用いないことを約束する「戦略的合意」に署名。バスク地方の民族主義政党「バスク自由党(Eusko AlkartasunaEA)」と同盟関係も結んだ。

 両者は最近、ETAに国際的な検証を伴う恒久的停戦を宣言するよう働きかけており、スペイン週刊誌「Cambio 16」の編集長でバスク問題に詳しいゴルカ・ランダブル(Gorka Landaburu)氏は、停戦宣言は数週間前から予測されていたと語る。

 その上で、「ETAは最終的な停戦ではなく、武装闘争の一時中止を宣言しただけ。組織としては存続する」と指摘する。

 また、ETAは06年に無期限停戦を宣言しながら、同年12月にマドリードのバラハス国際空港で爆破事件を起こし2人を殺害、和平交渉が破たんした経緯があることから、今回の停戦宣言についてバスク自治州ではあまり期待は膨らんでいないという。

■幹部拘束で闘争困難に、停戦は組織再編のため?

 一方、バスクの通信社バスコプレス(Vasco Press)のフロレンシオ・ドミンゲス(Florencio Dominguez)編集長も、「ETAはバタスナからの圧力に応じて、3月以降の(組織内部の)状況を公式に表明しただけ。ETAは警察の取り締まりにより組織の再編成が必要となっており、武装闘争を一時停止せざるを得なくなっていた」と説明する。

 スペイン警察は各国の捜査機関などと協力し、今年に入ってからだけでもETAメンバーとみられる68人を拘束した。5月には、軍事部門指導者のミケル・カレラ・サロベ(Mikel Karrera Sarobe)容疑者がフランスで拘束されている。

 ドミンゲス氏は今回の宣言について、「今のところは武装闘争を行わないものの、武装闘争を行えるよう活動は維持するという内容だ。武装放棄ではない」と述べている。(c)AFP/Olivier Thibault

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