【8月15日 AFP】旧東ドイツの国境警備隊が「ベルリンの壁(Berlin Wall)」で逃亡者の射殺命令を受けていたことを示す文書が見つかった問題で、ドイツ検察当局は13日、同壁で起きた死亡事件について新たに犯罪捜査を開始することを検討中だと発表した。

 東西冷戦の象徴的存在だった「ベルリンの壁」の着工46周年にあたるこの日、報道官は「ドイツ検察が、さらに手続きを進める必要があるかどうか」検討していると述べた。

 問題の文書は前週見つかったもので、旧東ドイツの諜報機関である国家保安省(シュタージ、STASI)の残した大量の文書を管理する連邦当局の資料から発見された。そこには、西側に逃げようとするものは子供であっても「止めるか殺す」よう求める明確な命令が記載されていた。

 作成者は分かっておらず、「たとえ越境者が女性や子供を連れていたとしても、武器の使用をためらってはならない。反逆者がよく使ってきた手だ」と記載されていた。

 旧東ドイツ政権はこれまで、ベルリンの壁での射殺は、威嚇射撃などに応じない逃亡者へのやむを得ない「最終手段」だったと主張してきた。

 同政権のシュタージは、旧ソビエト勢力圏において最も活動範囲が広く、そして最も抑圧的な諜報機関だった。

 ドイツ当局は、ベルリンの壁で発せられた一連の射殺命令に関与した疑いで旧東ドイツ国境警備隊のメンバーや当時の政府当局者、数十人に対する裁判を行ってきた。公式の統計によると、少なくとも270人が射殺された。

 「ベルリンの壁」着工記念式典に出席した政府関係者は、今回の発見によって、ドイツの歴史における一幕がまだ終わっていなかったことが明らかになった、と述べた。

 今回の発見はまた、シュタージの文書を管理する連邦当局に対する批判を拡大させた。

 ベルリンにあるシュタージの記念館のHubertus Knabe館長は「当局が、法的義務を果たし、(ベルリンの壁で)犯罪行為があったとの疑いについて検察に報告するかどうか疑問だ」と述べた。

 文書管理当局は12日、1997年に出版された東ドイツに関する歴史書に問題の文章が掲載されていることを認める一方、多くの人の目には触れていなかったと述べた。(c)AFP