【ソウル/韓国 25日 AFP】北朝鮮から国外脱出し、タイで収容されている約400人の脱北者らが、再定住を前提とした韓国への移送が遅れている事態に抗議し、ハンガー・ストライキを開始した。支援グループや韓国政府高官らが25日、発表した。

 「男性約100人、女性314人の脱北者がタイで24日夜、ハンストを開始した」と、支援グループ「北朝鮮人亡命者の送還を阻止する国際キャンペーン(International Campaign to Block the Repatriation of the North Korean Refugees)」が発表した。同グループのLee Ho-Taeg事務局長によると、「彼らは韓国への移送手続きが遅れていることに怒りを表明している」。これらの脱北者に航空券を発給することを韓国政府が拒否した可能性があるという報告も付け加えた。

 Ho-Taeg事務局長によると、バンコク中心部にある収容センターに最高3か月間にわたって抑留されている脱北者らは、劣悪な生活環境下に置かれているという。
「本来100人程度しか収容できない施設内に、300人以上の女性が閉じこめられている。1つしかないトイレを、300人で使用している状態だ」

 一方、脱北者のうちラオスで5か月以上にわたり収容されていた10代の少年少女3人は、ラオスの首都ビエンチャン(Vientiane)にある韓国大使館へ移送された。3人は本国送還されることとその場合の厳罰処分に対し、恐怖を訴えていた。

 韓国の宋旻淳(ソン・ミンスン、Song Min-Soon)外交通商相も、タイで脱北者によるハンストが開始されたことを認識していると述べた。ハンスト参加者の人数や交渉内容については言及せず、「円滑な問題解決」へ向けてタイ政府と交渉中だと明かした。ラオスで収容されていた少年少女3人については解放され、韓国大使館へ身柄が移されたことを認めた。宋氏は3人の身元については伏せた。

 日本の脱北者救援団体「北朝鮮難民救援基金」は、3人の身元を公開して支援を訴えていた。3人のうちの1人である少女、チェ・ヒャンさんは同団体を通じ、「私たちは自由を求めて遠い道のりをやって来た。私たちは、ただ自由を欲しがったがためだけに死にゆく可能性のある不幸な子どもたちなのです」と支援を求める声明を発表していた。
  
 北朝鮮からは近年、年間数万人が、飢餓や共産主義独裁政権による抑圧から逃れようと中国国境を越え、亡命している。多くの脱北者は同じ民族である韓国への再定住を希望するが、韓国政府は「北朝鮮政府へ刺激を与えることを恐れ」亡命者たちに非協力的であるとして、これまで支援グループらの非難を受け続けている。
 
 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch、HRW)」は前月、脱北の試みが発覚した場合の処分を北朝鮮政府が厳罰化されたと発表した。顔面殴打や食事抜きを含む懲役の刑期がさらに延長されるなどしたという。
 
写真は2006年8月24日、バンコクの裁判所内の収容場所に座る北朝鮮からの亡命者たち。(c)AFP/PORNCHAI KITTIWONGSAKUL