【9月25日 AFP】インドネシアで24日、農作物のキャッサバを食い荒らす恐れがある害虫駆除のため、寄生バチ2000匹の「環境に優しい特殊部隊」が畑に放たれた。キャッサバは、同国の主要農産物で、数百万人の主な収入源となっている。

 体長2ミリの寄生バチ(学名:A. Lopezi)は、害虫のコナカイガラムシの体内に卵を産みつける。ふ化した幼虫は害虫を体内から食べ尽くし、ミイラのように空洞にしてしまう。

 今回の寄生バチを放つ試みを行った科学者チームによると、コナカイガラムシはキャッサバと同じく南米原産で、同作物を餌とする害虫の中で最も壊滅的な被害をもたらすものの一つだという。

 コナカイガラムシは、食害を受けたキャッサバが国や大陸を越えて長距離輸送されるのに便乗してアフリカやアジアにたどり着いた可能性が高い。

 今回の試みには、コロンビアに本部を置く国際熱帯農業センター(International Center for Tropical AgricultureCIAT)、インドネシアのボゴール農科大学(Bogor Agricultural University)、国連(UN)の食糧農業機関(Food and Agriculture OrganisationFAO)の科学者らが参加した。研究チームは「環境に優しい特殊部隊」と命名した寄生バチが人間と動物に危害を及ぼすことはないと主張している。

 研究チームは24日午後、首都ジャカルタ(Jakarta)郊外にある、虫が外に出られないように周囲を覆っ畑に中米原産の寄生バチを放った。これにより、寄生バチを自然の状態で繁殖させ、地元の自然条件の中で観察することができる。こうした観察の後に寄生バチは露地畑へ放たれる。

 インドネシアは世界最大のキャッサバ生産国の一つで、年間の作付面積は約100万ヘクタールに及んでいる。栄養不良に悩む2億5000万人の発展途上国の人々の間では、キャッサバはコメに次いで最も多く消費されている主要農作物となっている。

 キャッサバは野菜として食べられるだけでなく、めん類から医薬品まで、さまざまな製品の材料になるデンプンに加工される。

 コナカイガラムシは、キャッサバの収穫高を最大84%減少させる可能性がある。アジア諸国の中では、2008年にタイで初めて大きな問題として報告された。

 アジアではこの他、カンボジア、ラオス、ベトナムなどでもコナカイガラムシが見つかっている。

 インドネシアで現在、コナカイガラムシの影響を受けている地域はまだそれほど広くないが、タイでそうだったように、対策を行わなければ速やかに拡散する恐れがあると研究チームは指摘している。タイではこの問題に対処するために寄生バチが利用され、成果を収めている。

 1980年代にサハラ以南のアフリカ地域で行われた大規模な寄生バチを利用した害虫駆除は、潜在的な多額の損害からキャッサバ産業を救ったと評価されている。(c)AFP