【6月25日 AFP】北米大陸に生息し、越冬の大移動で知られるチョウ、オオカバマダラ(学名:Danaus plexippus)は、太陽だけでなく地球の磁場も利用して、長距離飛行の進路を決めているとの研究論文が、24日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 特徴的なオレンジと黒の羽を持つオオカバマダラは毎年、米国とカナダ南部からメキシコ中部ミチョアカン(Michoacan)州にある山岳地帯の越冬地まで数千キロを飛行する。

 オオカバマダラが脳内にある太陽コンパスを使っていることは長年知られていた。

 だが興味深いのは、空が厚い雲で覆われている時でも大移動が可能であることだ。これは、地磁気コンパスにも同様に依存していることを示唆している。

 論文を発表した米マサチューセッツ大学(University of Massachusetts)の生物学者チームは、このことの証拠を発見し、オオカバマダラが地磁気ナビゲーションを使うと考えられる長距離移動性昆虫であることを初めて示したと述べている。

 研究チームは、オオカバマダラを飛行シミュレーターの中に入れて周囲の人工磁場をさまざまに変化させ、オオカバマダラが持つ方向感覚を検査した。

 大半のオオカバマダラは検査の最初の段階で赤道方向に飛行したが、磁場の傾斜角度を反転させると北方向に進路を変えた。このコンパスは、周囲に可視光スペクトル上端の(青色)光が存在するときのみ正しく機能した。

 オオカバマダラの触角には、これらすべてを正常に機能させるための感光性の磁気センサーが内蔵されていると思われることを研究チームは明らかにした。

 オオカバマダラは今回の研究により、鳥類、爬虫(はちゅう)類、両生類、カメ、ミツバチやシロアリなどの昆虫類のように磁場を利用して進路を決めていると考えられている動物の、現在も増えつつあるリストに新たに名を連ねることになる。

「秋の大移動の基礎となるメカニズムに関する知識を深めることは、気候変動および(餌の植物の)トウワタや越冬生息地の減少が続いていることで現在危機にひんしているオオカバマダラの保護の助けになるだろう」と論文の執筆者らは記している。

「現在考慮すべき新たな脆弱性は、人為的な電磁雑音によってオオカバマダラの地磁気コンパスが混乱する恐れがあることだ。人為的な電磁雑音は、渡り鳥の地磁気による方向探知機能を乱すことがあるようだ」(c)AFP