【1月14日 AFP】インドの首都ニューデリー(New Dehli)のあるIT企業の採用担当者は、山のように送られてきた履歴書を読んでいるうちに当惑してしまった。応募者の30人ほどが、過去の職歴に同じ一社を挙げていたのだ。

 リスクを冒したくない採用担当者らは、履歴書の「裏を取る」ことを専門とする会社に調べてくれと依頼した。

 その結果、約30人が過去の「雇用主」としてあげていた企業は、ぼろぼろのワンルームで営業していた携帯電話の修理店と発覚。そこのオーナーが偽のIT企業の人事担当者の振りをしていた。彼は経歴を詐称した人たちから金をもらう代わりに、採用企業から照会の電話がかかってきたら、いいように答えていた。

「私たちの調査は共謀を暴いた」と、履歴書の真偽を確かめた会社オースブリッジ(AuthBridge)のプリータ・プラドハン(Preeta Pradhan)副社長は言う。

 資格や職歴を詐称したり、ありもしない企業をでっち上げたり……。インドの厳しい雇用市場で何としてでも職を得ようと、応募者たちは捨て身の覚悟で経歴を詐称する。

 景況感の悪化と高い利率で、同国の経済成長はこの10年で最悪だ。そのため企業の採用数も少なくなっている。

 これまでに何百万人もの応募者を審査したオースブリッジによれば、2012年から2013年は約5人に1人が何らかの虚偽の申告をしていた。学歴にいたっては、51%が偽っていたという。

 履歴書のチェックは昔から行われていたわけではない。インドの経済成長を後押ししてきた、外国のIT企業によるアウトソーシングが一般的になってからだ。

 インドに業務の一部を委託する外国企業は、現地社員が信頼に足る人物であるという保証を求める。同国のIT業界内での競争が激化したことにより、離職率が上昇しているためだ。

 履歴書調査の業界団体によれば、その市場規模は年3200万ドル(約33億円)で、急速に拡大しているという。(c)AFP/Abhaya SRIVASTAVA