【9月23日 AFP】化石燃料の排ガス量を、より人体に安全な水準にまで削減すれば、今世紀末までに年間数百万人の命が救われることが見込まれるとの研究論文が22日、英科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)」に掲載された。

 今回の試算は、石炭、石油、天然ガスから排出される「微小粒子状物質(PM2.5)」と「オゾン」という2大汚染物質の量のシミュレーションに基づくもの。

 米ノースカロライナ大学チャペルヒル校(University of North Carolina at Chapel Hill)のジェーソン・ウェスト(Jason West)氏率いる研究チームは、「RCP4.5」と呼ばれる排出量予測シナリオから今回のモデルを導出した。同シナリオでは、2100年の平均地表温度が産業革命以前の水準に比べて約2.6度高くなると予想されている。

 このRCP4.5シナリオに基づいた試算によると、2030年に年間約50万人の死亡が回避され、その後の2050年には130万人、2100年には220万人と増加していくという。

 早死にを回避することで、人々は健康状態を良好に保ち、労働に従事できる状態でいられる。その結果、2030年や2050年に、排出量削減に掛かる費用を超える経済効果を生むことになる。特に大気汚染による死亡例の3分の2を占める東アジアでは、この効果は顕著だという。

 だが今世紀末には、排出量のさらなる削減にはより多くの費用がかかることが見込まれるので、費用対効果は縮小するとみられている。

 酸素原子3個で構成されるオゾンは、太陽の危険な紫外線を除去するのを助ける働きがあるため、成層圏では地球を保護する役割を果たしている。だが地表面では、交通排ガスが太陽光に反応して発生するオゾンは、PM2.5と同様に肺内にとどまって人体に危険を及ぼす恐れのある刺激物質の一種だ。(c)AFP