【7月19日 AFP】がん組織と正常組織を数秒のうちに「見分ける」新しい機能を持つ外科用ナイフ(メス)に関する報告が17日、米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)」に発表された。腫瘍除去手術の改善につながる技術として期待がかかる。

「アイナイフ(iKnife)」として知られるメスは、組織切除に使用する電流によって発生する蒸気を分析し、その組織が正常組織か、がん組織かをリアルタイムで医師に報告する。患者91人に試験的に使用したところ、「メスの診断は極めて正確」で「手術室での広範な使用を開始するにあたって十分信頼が置ける」ことが示されたという。

「アイナイフ」は質量分析法を用いて組織から発生する蒸気を分析し、含まれている成分を3秒以内に執刀医に知らせる。現行では、組織を一部切除し病理検査室へ送って分析するなどの方法が採られているが、そうした方法は「コストがかかり、不正確なことが頻繁」な上、時間も20~30分かかると、報告したハンガリーと英国の研究者たちは指摘している。

 論文によれば「がん組織切除手術の正確性を向上させる補助的な技術は、驚くことに、日常的な臨床診療の中にほとんどなく」、不確実性が拭えない。そのため患者は手術を繰り返したり、軟部組織腫瘍では再手術は必ずしも選択肢とされず悪化することさえある。

「アイナイフは現行の腫瘍診断を向上できるもので、手術中の決定に効果をもたらすと共に最終的には腫瘍除去手術の結果を向上させる可能性を持つ」と研究チームは結んでいる。(c)AFP