【12月5日 AFP】南アフリカで自警団が不法移民(不法滞在者)に対する抗議活動の一環として、不法移民の医療へのアクセスを阻止している問題で、裁判所は4日、当局はこうした「外国人嫌悪」な抗議行動への対策を強化する必要があるとの判決を下した。

「オペレーション・ドゥドゥラ(ズールー語で『押し返す』を意味する)」として知られる自警団は、ハウテン州とクワズールー・ナタール州の診療所で数か月にわたり抗議活動を行い、身分証明書の確認し、南ア国籍者以外の受診を阻止している。

国境なき医師団(MSF)やトリートメント・アクション・キャンペーンなどの人権団体は、こうした自警団の行動に対し、当局が十分な対策を講じていないとして提訴した。

ヨハネスブルクの最高裁判所は、当局に対し、「医療サービスを求めるすべての人々が安全かつ支障なく受けることができるよう、あらゆる合理的な措置を講じる」よう命じた。

自治体、保健当局、警察に対し、「外国人嫌悪の自警団による公共医療施設へのアクセス妨害を防ぐために必要な措置を講じる義務」があると指摘している。

スチュアート・ウィルソン判事は判決文で、「クリニックで起きている事態に対処するために訴訟が必要になったことは、私の見解では極めて残念だ」「社会で最も弱い立場にある人々への基礎医療の確保に向けた試みに対する、直接的かつ組織的に行われたと思われる攻撃に対する政府の対応の弱さは、深刻な懸念事項だ」と述べた。

オペレーション・ドゥドゥラは、犯罪率と失業率の高さに対する国民の怒りを外国人に向けてきた。

2020年に「活発な市民運動」として結成されたオペレーション・ドゥドゥラは、若い黒人が中心となっている。軍隊式の行動で、外資系企業の店舗を閉鎖したり移民の子どもたちが公立学校に通うのを阻止したりして存在感を高めている。

■「最大の脅威の一つ」

MSFは8月、オペレーション・ドゥドゥラの活動が数十か所の診療所で数千人の患者に深刻な影響を与えたと発表した。患者には、妊婦や子ども、糖尿病からエイズ(後天性免疫不全症候群、AIDS)までの重症患者も含まれている。

MSFによると、2か所の診療所では、オペレーション・ドゥドゥラの活動に治安部隊と病院職員が「協力」していたという。

最高裁は11月、「違法な」封鎖をやめるようオペレーション・ドゥドゥラに命じたが、散発的なピケが続いている。

ウィルソン判事は、「外国人嫌悪は、現在われわれが直面している民主主義と人権に対する最大の脅威の一つだ」「人種差別の一種にすぎない」と述べた。

南アは、失業率が約32%と極めて高いにもかかわらず、アフリカ大陸で最も工業化が進んでいるため、仕事を求める外国人が集まってくる。

2022年の公式統計によると、南アには約240万人の移民(在留外国人)がおり、人口の約4%を占めている。

こうした移民の流入と暗い経済見通しが相まって、近年、反移民暴動が散発的に発生している。(c)AFP