【12月4日 AFP】国連の人権専門家8人は2日、イランに対し、12歳で結婚させられた夫の死をめぐり、死刑が確定した女性死刑囚について執行停止を強く求めている。

現在25歳のゴリ・コウカンさんは、パキスタン、イラン、アフガニスタンに居住するイラン系民族バルチ人。今月死刑を執行される予定となっている。

イランの人権状況担当の特別報告者や、女性・少女差別に関する作業部会のメンバーを含む専門家らは、「コウカンさんの事件は、イランの刑事司法制度において、児童婚やドメスティックバイオレンス(DV)の被害者となった女性が直面する組織的な性差別を如実に表している」「彼女に対する死刑執行は、国際人権法の重大な違反となるだろう」と述べた。特別報告者らは国連人権理事会などによって任命されるが、国連を代表する立場にはない。

コウカンさんは12歳で強制的に従兄(いとこ)と結婚させされ、13歳で自宅で助産師や医師が立ち合わない無介助分娩(ぶんべん)によって息子を出産した。

「農家の嫁」として農作業に加え家事をさせられた上、長年にわたり身体的・精神的暴力を受けてきたとされる。

そして2018年5月、夫は18歳のコウカンさんと5歳の息子を殴打した。

コウカンさんは助けを求めたが、駆け付けてくれた親戚と夫の間で争いとなり、最終的に夫が殺害された。

専門家らは、「ゴリ・コウカンさんはDVの被害者であり、司法制度の犠牲者でもある」「彼女の処刑は、甚だしい不正義を意味する。イランは、自身と子どもを守りながら、長年にわたりジェンダーに基づく暴力に耐えてきた女性を殺害することになる」と述べた。

■「血の代償金」

専門家らは、読み書きができず、弁護士にも相談できなかったコウカンさんが、夫の死の全責任を負うよう強要されたとされる点を強調した。

イランのシャリア(イスラム法)で、故意による殺人は「同害報復刑」の対象となるが、被害者の相続人が「血の代償金」を受け入れれば、死刑を免れることができる。

夫の家族は「血の代償金」を受け入れる意思を示したものの、要求した金額は9万ドル(約1400万円)。専門家らは、「相場を大幅に上回り、コウカンさんの手が届かない金額」だと強調。

「コウカンさんが死刑に処されるのは、正義に基づいてではなく、命の対価を支払う金銭的な余裕がないからだ」と述べ、この事件はイラン司法制度における女性に対するより広範な差別のパターンを反映していると付け加えた。

専門家らは、2010~2024年にイランで処刑された女性241人のうち、半数近くが主に夫または交際相手に対する殺人罪で有罪判決を受けた点を指摘。

「こうした女性の多くは、DVや児童婚の被害者であるか、身を守るために行動した」と述べた。

アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体によると、絞首刑を採用しているイランの死刑執行数は、中国に次いで世界で2番目に多い。(c)AFP