イラク、女性を「二級市民」化 家族法改正でイスラム教の規定を選択可能に
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【10月16日 AFP】国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は15日、イラクの家族法改正について、女性の権利を制限し「二級市民」にしていると批判した。
イラク議会は1月、1959年家族法を改正し、結婚、相続、離婚、子どもの親権といった家族問題に関して、宗教的規定と世俗的規定のどちらかを選択できるようにした。
この改正に基づき、イラク政府のイスラム教シーア派当局は「家族問題に関するシーア派規定」を制定し、議会で承認された。
これにより、男性は妻に通知することなく、結婚契約をシーア派の宗教法典に基づくものに変更することができる。
イラク人女性のガザルさんはHRWに対し、元夫が離婚から10年後、シーア派の家族法を遡及適用し、10歳の息子に対するガザルさんの後見権を剥奪する訴訟を起こしたと語った。
元夫にたびたび暴力を振るわれるようになったため離婚したというガザルさんは、「女性と子どもの権利を保護する法律の下で結婚したにもかかわらず、10年以上もたってからその権利を剥奪するために法律を悪用するなど、到底受け入れられない」と語った。
シーア派の家族法では、夫が妻に通知したり、同意を求めたりすることなく離婚できるようになり、「7歳以降の子どもの親権は自動的に父親に移る」とHRWは指摘した。
また、妻は自分の同意なしに重婚や離婚をしてはならないと求めることはできるが、夫がこうした条件に違反したとしても、重婚や離婚は有効のままとなる。
HRWのイラク調査員、サラ・サンバー氏は新家族法について、「女性に対する差別をさらに制度化し、法的に女性を二級市民に降格させるものだ」「女性や少女から自らの人生における主体性を奪い、男性に与えている。直ちに廃止されるべきだ」と述べた。
以前の家族法改正案は、イスラム教徒の少女の婚姻開始年齢が9歳まで引き下げられるのではないかとの懸念から、フェミニストや市民社会団体から反発を受けていた。
アムネスティ・インターナショナルは今月、「家族法改正法案は、児童婚を禁止する法律の抜け道としてしばしば利用される事実婚・内縁関係の合法化にも道を開くものであり、女性と少女から離婚や相続に関する保護を剥奪する可能性がある」と警告した。
改正家族法は、イスラム教スンニ派にも独自の規定を制定することを認めているが、スンニ派は依然として1959年の家族法を順守している。(c)AFP