【10月1日 AFP】フランスで10年近くにわたって元夫に薬物を投与され、意識を失っている間にインターネットで募った多数の見知らぬ男にレイプされていた事件のサバイバー、ジゼル・ペリコさん(72)が、被告の一人が控訴を維持したため、来週再び試練に臨む。

2024年12月に結審した一審では、元夫のドミニク・ペリコ受刑者を含む51人の男が有罪判決を受けた。

ジゼルさんは匿名の権利を放棄し、裁判を通して威厳を保ち毅然とした態度を貫いたことで、フェミニストの英雄となり、男性による性暴力と闘う女性たちの象徴となった。

有罪判決を受けた51人の男のうちの1人、建設作業員のフサメティン・D被告(44)は判決を不服として控訴し、取り下げなかった。このため南仏ニームで6日から控訴審が開かれ、最長で4日間続く見込み。

ジゼルさんの弁護士の一人、アントワーヌ・カミュ氏はAFPに対し、「このような試練にはもう二度と直面しないという選択もできたはずだ」「しかし彼女は、レイプはレイプであり、軽いレイプなど存在しないということを明らかにするために裁判に参加する」と語った。

■「私には耐えられない」

ジゼルさんは、10年間にわたり元夫に大量の薬物を投与され、意識不明の状態で見知らぬ男たちにレイプされ、性的虐待を受けた。そのほとんどは、南仏の田舎町マザンにある自宅で行われた。

アビニョンでの一審では、ジゼルさんは毎日約50人の被告と法廷で対峙(たいじ)したが、今回は対峙するのはフサメティン被告一人だけだ。

カミュ氏によると、ジゼルさんの3人の子どものうちの1人、フロリアンさんが裁判に付き添い、傍らで支えるという。

フサメティン被告は昨年12月、拘禁9年の判決を受けたが、健康上の理由で収監は延期された。

フサメティン被告は一審で、「私はレイプ犯ではない」「これは私には耐えられないことだ。彼は彼女の夫だ。まさか彼が妻にこんなことをするとは思いもよらなかった」と主張した。

当初、他に16人が判決を不服として控訴したが、その後取り下げた。だが、フサメティン被告の弁護人は6月、「刑事責任能力の有無と量刑の両方について、控訴を全面的に維持する意向だ」と述べた。

■元夫が証言へ

一方、元夫のドミニク受刑者は拘禁20年の判決に対して控訴しておらず、現在は刑務所の独房で服役している。控訴審では証人としてのみ出廷する。

ドミニク受刑者の弁護士は、「ドミニク・ペリコ氏は、自身の見解や立場を変えるつもりはない」と説明。一審でのドミニク被告の第一声が「私はレイプ犯であり、この部屋にいる男たち全員がレイプ犯だ」だった点を強調した。

一審では、多くの被告側がドミニク被告に責任を転嫁し、奔放なカップルとのプレイに参加していると信じ込まされたと主張したが、裁判所は納得しなかった。

27~74歳の共犯者50人のほとんどがレイプ罪で有罪判決を受けた。全員が拘禁刑を言い渡されたが、刑期は軽いもので性的暴行で起訴された年金受給者に言い渡された拘禁3年(うち執行猶予2年)から、重いものはジゼルさんを6回レイプした男に言い渡された拘禁15年までさまざまだった。

フサメティン被告は、2019年12月にインターネット上でドミニク被告と出会ったと主張。その際ドミニク被告は自分たちは「奔放なカップル」だと名乗り、妻は「寝たふり」をしていると述べたという。

その日の夜、ジゼルさんの意識のない体を少なくとも30分間虐待した後、ジゼルさんのいびきを聞いて初めて異変に気づいたと主張している。

フサメティン被告は急いでその場を立ち去ったが、当局に通報する必要はないと判断したと主張している。(c)AFP