【9月23日 AFP】カナダ・モントリオールを拠点に活動する美術作家のオードリーイブ・グーレさんは、AI搭載のロボットアームが自身の作品を再現するのを見て最初は不安を覚えたが、最終的な結果には「思わず感心した」と言う。

モントリオールの企業「アクリル・ロボティクス」が開発したこのロボットアームは、アーティストが自身の作品の高品質なレプリカを作成し、収益を得られるよう支援することを目指している。

筆を掴んで絵の具に浸し、一筆一筆丁寧に作品を再現する様子を見守っていたグーレさんは、「良い意味で驚いた」と言い、アクリル・ロボティクスとの協力に同意した。

同社の創設者、クロエ・ライアン氏はAFPに対し、自身の収入の現実を目の当たりにして、このアイデアが生まれたと語った。14歳で初めて絵を売り始めたが、各作品を完成させるのに数週間、時には数か月もかかることにフラストレーションを感じていた。

「ざっと計算してみたら『時給2ドル(約300円)しか稼げていない』ということに気がついた」のだという。

ライアン氏はモントリオールのマギル大学で機械ロボティクスを学んだ。自身の作品を再現するためにロボットがどのように役立つかを考えるようになり、その後、アーティストが世界中でこの技術を利用できるようにするための会社を立ち上げた。

■「最後の層」

グーレさんは、ロボットの作業プロセスを確認しながら、「本当に私の作品のように見える」とし、「筆跡が見えるのが良い。筆がどう動いたか、どんな形を描いたかが本当にわかる」と述べた。

しかし、ロボットが制作したバージョンには「自身の作品ほどの深みがない」ことも指摘する。「最終的な作品は、完成までに5回ほど大きく変化(アイデアの変更や塗り直しなど)しているかもしれないが、ロボットアームは『最後の層』しか見えない」と話した。

この点についてライアン氏は、ストロークの順序を再現することで、同社のレプリカが「写真プリントでは決して捉えられない作品のオーラを捉えることができる」と説明した。

グーレさんの作品を再現するためにアクリル・ロボティクスの専門家がロボットを動かすための指示を入力する。作品は、デジタルの筆遣いと顔料で仕上げられていく。

ライアン氏は、将来的には技術を進化させ、アーティストが画像を直接アップロードできるようにしたいと考えている。好みのアーティストのスタイルで犬の肖像画を制作するなど、好きなようにリクエストできるオンデマンド市場の計画だ。