大人を魅了するドールハウス 癒やしと創造の小さな世界
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【8月25日 AFP】美しい照明に照らされ、まきが燃える客間。ふかふかの肘掛け椅子のそばにはグラスとワインボトルが置かれ、大きな振り子時計が時を刻んでいる——。まるで雑誌から抜け出したような光景だが、ここにある物はすべて手のひらに収まるほどの大きさだ。
歴史的な建築物を専門とするドールハウスの作家チーム「マルバニー&ロジャース」によるミニチュア作品にうっとりと見入る愛好家のミシェル・シモンズさん(57)は、「(19世紀の)ビクトリア朝の家に憧れていたけれど、その夢はかなわなかった」と笑顔を見せた。
企業の人材コンサルタントを務めるシモンズさんは、パンデミックをきっかけに子どもの頃の情熱を取り戻し、これまでに10個ほどのドールハウスを購入して改装し、転売してきたという。
米ボストン在住のシモンズさんは、娘とともに大西洋を渡り、1985年から英ロンドンで毎年開かれている「ケンジントン・ドールズハウス・フェスティバル」に参加。ミニチュアのカーテンやベビーベッドを探し求めた。
このフェスティバルは、世界中から精巧なミニチュア職人が集まるイベントだ。ドールハウスを趣味とする人は年々増えており、オンラインでの活動も活発になっている。
■大人の趣味
シャンデリアから絵画、マホガニーのダイニングテーブル、キッチン用品まで、どんなミニチュアもそろうが、どれも決して安くはない。
ドールハウスといえば子どもの遊びと思われがちだが、ハイエンドなミニチュアをコレクションするのは、大人ならではの趣味だ。
「ドールハウスは職人が手がける精巧な工芸品」と語るのは、「ミニチュアマニア」を自認するレイチェル・コリングスさん(47)。
普段は編集の仕事をしているコリングスさんは、著名なミニチュア作家ローレンス&アンジェラ・セント・レジャーの作品をいくつか購入したという。1点が最低でも40ポンド(約8000円)はする。
「半分にスライスされたレモン、この小ささを想像してみてください。レモン絞り器や料理用のはけ、実際に使える泡立て器まであるんです」とコリングスさんは目を輝かせ、「本当に美しい」と話した。
ドールハウスの起源は1500年代の欧州にさかのぼる。当時は富裕層の調度品を縮小して展示するために作られ、「ベビーハウス」と呼ばれていた。子ども用ではなく、大人のためのものだった。