【8月10日 AFP】詐欺罪で一審が継続中の天野遥被告(36)は、有罪判決を受けていないのにもかかわらず6年以上にわたり独房に拘禁され、精神の崩壊を感じている。すべてを失い、過酷な環境を強いられても、守り通していることがある。虚偽の自白は決してしない。

日本の刑事司法制度では推定無罪の原則が守られず、自白の強要が99%の有罪率を支えているとの批判がある。

「逮捕された時点から、(死刑囚を含む)受刑者と同じような生活をさせられている」と天野被告は東京・小菅の東京拘置所の面会室でAFPに語った。

「たぶん何らかの精神疾患になっているが、まともな診察の機会すらないので体の状態が分からない」と被告は透明の間仕切り壁越しに語った。

AFPは今回、裁判所に接見禁止の一部解除の申し立てを行い、許可を得た上で被告と面会した。

■「すべてを失った」

組織的詐欺に関与した疑いで2018年に逮捕されて以来、被告は外部と連絡を取ることが許可されず、仕事やパートナー、そして精神的な健康を含め「すべて失った」という。

独房の床には三畳の畳が敷かれ、エアコンはない。夏に涼しさを感じるのは、食事用の小窓から届く風のみ。日中はほぼ横になることも壁にもたれることも許されず、畳の上に座って過ごす。

レストランを経営していた被告は、逮捕後に体重が約30キロ減った。被告によると、連絡は弁護士としか取ることができず、家族を含むその他の人との接触は原則、許可が出ない。

「溺愛していた」という娘は現在7歳で、最後に顔を見たのは6年前。彼女が「自分のことを覚えているかどうか分からない」という。

日本では、被疑者が黙秘したり自白を拒否したりすると、長期の未決勾留が行われ、自白が事実上の釈放条件と見なされるケースが多いと人権団体は指摘している。

法務省の刑事手続きに関する協議会に提出された資料によると、2021年の通常第一審事件において、自白事案では1か月以内に7割が保釈されたのに対し、否認事案で同期間内に保釈されたのは約3割に過ぎない。

この自白を引き出すための拘禁、いわゆる「人質司法」に関して、天野被告を含む被害者グループが原告となり、その憲法適合性を争う訴訟を起こし始めて注目を集めている。

訴訟を担当する高野隆弁護士は、日本では司法手続きの流れが「逆転」しているという。

「被疑事実を争うと勾留が長引き、否認すると保釈が認められない。有罪判決が出るよりも前、裁判すら始まっていないのに、すべてを失い先に処罰を受ける。それから裁判。最後に有罪かどうか分かって、まったく時系列が逆転してしまっている」と語った。