【7月11日 AFP】欧州人権裁判所(ECHR)は10日、陸上女子800メートルで二つの五輪金メダルを獲得したキャスター・セメンヤ(34、南アフリカ)が、女子選手として競技に参加するために男性ホルモンのテストステロン値を下げることを強制する規則に異議を唱えた際、スポーツ仲裁裁判所(CAS)とスイス連邦最高裁が公正な裁判を行わなかったとの判断を下した。

セメンヤは「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」に分類されているが、法的には常に女性として認識されている。2018年以降は、ワールドアスレティックス(世界陸連)の規則に基づいてテストステロン値を下げる薬を服用することを拒否したため、得意の800メートルに出場できていない。

セメンヤは世界陸連の規則に異議を唱えるため、長らく法的な戦いを続けている。

2019年にスイス・ローザンヌに本部を置くCASがセメンヤに不利な判決を下すと、その決定は2020年にスイス連邦最高裁でも支持された。

欧州人権裁判所の大法廷は、スイスの裁判所が「問題となる個人の権利の重大さに見合った厳格な司法審査」を行わなかったとし、セメンヤの公正な裁判を受ける権利を侵害したと判断。セメンヤに8万ユーロ(約1370万円)の裁判費用を支払う命令を下した。

一方で、申し立てられた違反がスイスの管轄外であるため、セメンヤが差別をうけたかどうかについては判断できないと述べている。

世界選手権でも3度の優勝を誇るセメンヤは、記者団に対し「ポジティブな結果」と述べ、「アスリートを尊重し、アスリートの権利を最優先にする必要がある」「優先事項はアスリートの保護にある」と語った。(c)AFP