■スターの素質

ヒョクとソクは、新たに結成されたボーイズグループ「1Verse」のメンバーとしてスカウトされた。大きくはないがソウルを拠点とするレーベル「Singing Beetle」が初めて契約したアイドルグループだ。

同レーベルのミシェル・チョ代表取締役(CEO)は、友人を通じて2人の若い脱北者と出会った。当時、工場で働いていたヒョクのラップを耳にした瞬間にその「天性の才能」にすぐに気づいたとAFPに語った。

「ラップの才能なんてまったくない」と言っていたヒョクに無料レッスンをオファーし、スタジオに招いた。彼はすぐにラップに夢中になった。チョ氏によると、ヒョクはやがて「音楽に賭けてみようと決心し」、事務所初の練習生となったという。

一方、ソクはヒョクとは対照的で「最初から自信と確信に満ちていた」といい、自身を売り込むことにも積極的だったと振り返る。

ソクは自分と同じ脱北者と一緒にトレーニングを受けると知ったとき、「もしかしたら自分もできるかもしれないという勇気をもらった」と話していたという。

■デビューは「すぐそこ」

「1Verse」のメンバーは20代の5人。北朝鮮出身のヒョクとソク以外は、中国系米国人のケニー、ラオス・タイ系米国人のネイサン、そして日本出身のダンサー、アイトだ。5人は互いの言葉はほとんど話せない。

だが、英語を勉強中のヒョクは、言葉は問題でないと言う。「お互いの文化についても学んでいる。少しずつ距離を縮めて、ギャップを埋めようとしている」

「僕たちは、驚くほど通じ合っている。言葉は完璧とは言えないけれど、それでも理解し合っている。時々、信じられないほどだって思う」

グループのメインダンサーを担う日本人練習生のアイトは、北朝鮮出身のメンバーとの対面に「ワクワクしていた」とAFPに語った。

「日本でニュースを見ていると、国際的な脱北者の問題がよく出てきて、全体的なイメージはあまり良くない」

だが、ヒョクとソクに出会ったときに不安は「すべて消えた」という。

そして今、5人のデビューは間近だ。

ヒョクとソクにとって、北朝鮮から韓国でK-POPデビューするまでの道のりは決して平坦ではなかった。だが2人は、「1Verse」を絶対成功させると決意している。

「自分の声で誰かを感動させたい。その気持ちは日に日に強くなっている」とソク。

ヒョクは、本物のグループの一員になったという実感をかみしめていると言い「本当に実感している。もうすぐデビューだって」と話した。

※記事内容は2025年3月27日時点の情報です。(c)AFP