【5月23日 AFP】ペルー西部の町ワチョで、ブラスバンドの演奏に合わせてひつぎを担いだ4人の男が踊りながら墓地へと歩を進めていく。

「死のダンサー」と呼ばれる担ぎ手たちは、バランスを取りながら、肩にひつぎを載せてステップを踏む。

葬儀の目的は、残された家族や友人の悲しみを和らげることだ。参列者は泣きながら手をたたいて踊り、ひつぎにビールを掛ける。

葬儀社の代表アレックス・カナレスさんによると、踊る葬送は比較的新しい文化で、約8年前に同市から全国に広まった。人口17万1000人のワチョではもともと、厳粛な葬儀よりもにぎやかなものが一般的だった。

「遺族にいい思い出を残してあげたい」と話すカナレスさん。葬儀社には月に約20件の依頼があるとし、費用は1件に付き106ドル(約1万5000円)だと説明した。

◼️「いい思い出として記憶したい」

72歳でがんで亡くなった農家の男性の葬儀が執り行われた。葬儀では、白いシャツにネクタイを締めた黒いパンツ姿の4人の担ぎ手が、男性の自宅から墓地へとひつぎを運んだ。葬列は南米音楽のリズムに合わせて踊りながら集落の間を進んだ。

男性の孫娘は「祖父の死はつらいし、もう2度と会えないのは悲しい。だけど祖父のことはいい思い出として記憶したい。祖父が一番好きだった音楽と共に」とAFPに話した。

お祭りのような葬儀は、途中で担ぎ手の休憩時間をはさみつつ、約90分間続いた。

担ぎ手は大学生や工場従業員、タクシー運転手が担っている。全員、本業の空き時間に本番に向けて練習を重ねているという。

担ぎ手の一人、アレクシス・マレンゴさん(35)は「(遺体が)重い時もあり、きつい仕事だ。けれど踊りへの強い意志を持って、最善を尽くさなければならない」と話した。(c)AFP/Carlos MANDUJANO