【10月29日 AFP】英イングランド北東部にあるドードン(Dawdon)炭鉱は30年前に廃坑となった。ところが今、思いもよらぬグリーンエネルギー革命の舞台としてよみがえっている。

 風にさらされた沿岸部の町シーハム(Seaham)に近いこの鉱山は、1991年に閉鎖されるまで地中深くから石炭を掘り出す、炭素集約度の高い炭鉱だった。

 一部は海抜0メートル以下にあるため、ドードンは廃坑以降ずっと水浸しになっているが、その水は地熱で温まっている。

 地元当局はこの地熱に注目し、無尽蔵にある有益なグリーンエネルギー源を活用する新たな宅地開発計画を進めている。

 ダラム(Durham)の自治体議会で気候問題を担当するマーク・ウィルクス(Mark Wilkes)議員は、「熱は基本的に地中から発生しています」と語る。

 鉱山深部の水は、地下で約20度まで温まっている。

 かつて数千人の作業員がひしめいていた鉱山の入り口では今、処理プラントの大きなパイプが温水を吸い上げている。その量は2秒ごとにバスタブ一杯分。この温水を利用して、ヒートポンプ回路内の水を55度から60度になるまで温める。

 ここで発生した熱は、いずれ地域のコミュニティーに供給される。一方、強酸性で鉄を含む排水は、地元のビーチや給水設備を汚染しないよう処理してから海へ放出する。

■石炭利用の産業革命からグリーンエネルギー革命へ

「産業革命から受け継いだもの(炭鉱)を、グリーン革命に利用しているわけです」とウィルクス氏はAFPに語る。

 これまで、温水の熱はこのポンプ施設の暖房にのみ利用されてきた。しかし2年後には近隣に1500戸からなる新しい住宅地が開発される計画で、そこでの熱供給はすべてこの施設によって賄われる。

「これは無尽蔵のエネルギー源です。水は絶え間なく出てきます」とウィルクス氏は言う。「技術コストはかかりますが、うまくいけば将来的には抑えることができるでしょう」

 このような大規模地熱プロジェクトの取り組みは、英国では初となる。ウィルクス氏は近隣の事業所などにも熱を供給したいと考えている。

 英国での発電は、天然ガスに大きく頼っている。しかし、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相は、2035年までにエネルギー生産のすべてを再生可能エネルギーに移行し、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を2050年までに達成させる考えを示している。英国は議長国として、10月31日からグラスゴーで始まる国連(UN)気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に臨む。

 10月上旬、天然ガス市場が史上最高値をつけたことも、地熱利用の緊急性を際立たせた。価格高騰に火をつけたのは、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)解除後の経済再開と、北半球の冬の需要増に対する懸念だった。