【10月7日 AFP】初のデング熱治療薬開発につながる可能性がある新たな化合物を発見したとする研究論文が6日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。デング熱は世界で毎年数千万人が感染し、激しい痛みを引き起こすことから、英語では「breakbone fever(骨折り熱)」とも呼ばれている。

 この化合物は「JNJ-A07」と呼ばれ、培養した細胞とマウスを使った実験で、デングウイルスを効果的に無力化し、複製を阻止して感染を予防することが示された。感染前の予防薬としても、感染後の治療薬としても効果があるとみられている。

 米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)公衆衛生学部のスコット・ビーリング(Scott Biering)氏とエバ・ハリス(Eva Harris)氏はネイチャーが掲載した論評で、今回の発見を「デング熱治療薬分野で大きな進歩」と評した。両氏はいずれも今回の研究には関与していない。

 デングウイルスは蚊が媒介して感染が広がる。4種類の株が存在するため、一つに感染した後でも他の株の感染を防ぐことができず、2度目の感染は重症化することが多い。今のところ治療法はなく、ウイルスを媒介しにくくする細菌に蚊を感染させるなど、感染防止策に重点が置かれている。一部の国では「デングワクシア(Dengvaxia)」というワクチンの使用が認められているが、効果があるウイルス株は1種に限られる。

 化合物「JNJ-A07」は、デングウイルスの複製で重要な役割を果たす2種類のタンパク質の相互作用を阻害する。蚊やヒトを含む細胞の実験では、4種類のデング熱株すべてに効果があることが示された。(c)AFP/Sara HUSSEIN