【8月7日 AFP】英国各地の美容師らが、カットした髪を利用して、タンカー事故などで流出した油の除去やコンポストづくりに役立てるなど環境保護の取り組みに参加している。

 イーストロンドン(East London)のヘアサロンで、フライ・テイラー(Fry Taylor)さんは髪の毛を利用した汚染除去フィルターの効果を実演してみせた。テイラーさんは持続可能性を追求する美容師の団体「グリーンサロンコレクティブ(Green Salon Collective)」の創設者の一人だ。

 水槽の水にはエンジンオイルが入れられていた。髪の毛を詰めた綿の網袋で水面を拭うと、あっという間にオイルが取り除かれていく。

 かつて美容師として働いていたテイラーさんは「髪は自然にオイルを吸着して離しません。この働きが大事なんです」と言う。

 専門家によると、髪の毛1キロ当たり最大8リットルの油を吸収できる。

 髪の毛を使ったフィルターのアイデアは米国で生まれ、実際の災害でもすでに試験済みだ。昨年、インド洋の島国モーリシャス沖で発生した、日本のタンカーの座礁による燃料流出事故がその一つだ。

 テイラーさんは「各国の政府や行政が採用するまで5年や10年待つのではなく、自分たちでやりましょう」と呼び掛けた。

■グリーン税

 グリーンサロンコレクティブによると、英国の理容業界では毎年、サッカー競技場50個分の廃棄物が出る。

 ほとんどの廃棄物──アルミホイルやヘアカラーリング剤のチューブなど、そしてカットした髪の99%はごみ埋め立て地に送られる。

 もう一つ大きな問題は、ヘアカラーリング剤やブリーチ剤などの化学廃棄物だ。

 テイラーさんによると英国には現在、約3万店のヘアサロンがあり、またサロンに所属しないフリーランスの美容師が10万人いる。こうした美容師それぞれが過酸化水素水やアンモニアを下水に流している。

 グリーンサロンコレクティブでは、これらの廃棄物を小さなごみ箱に入れてためるよう各ヘアサロンに呼び掛けており、それを回収し発電施設に運ぶ取り組みを進めている。

 ロンドンのおしゃれな地区、スピタルフィールズ(Spitalfields)でアダム・リード(Adam Reed)さんが経営するサロンには、髪の毛、マスクなどの保護具、金属、紙、プラスチックをそれぞれ分別するごみ箱が置かれている。使い残した髪染め製品もリサイクルしている。

 リードさんは「グリーン税」として1~2ポンド(約150~300円)を料金に上乗せしている。客の反応は「かなりいい」と言う。