【4月29日 AFP】フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は28日、中国が領有権を主張する南シナ海(South China Sea)の係争海域に派遣している、海軍と沿岸警備隊の巡視船を引き揚げるつもりはないと表明するとともに、フィリピンが同海域の主権を有していることに交渉の余地はないと強調した。

 南シナ海をめぐっては先月から、係争海域に中国船団が停泊し外交問題となっている。中国は、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にいる船団の引き揚げを拒否。フィリピンはこれを受け同海域内での巡回を強化し、緊張が高まっている。

 中国は、南シナ海のほぼ全域に対して領有権を主張している。

 フィリピン国内では、ドゥテルテ氏に中国に対し強い態度で挑むよう圧力が高まっている。だが、ドゥテルテ氏は中国と親密な関係を築いており、中国に対峙(たいじ)することに消極的だった。

 ドゥテルテ氏は28日夜、「良き友人」の中国には、新型コロナウイルスワクチンの無償提供などさまざまな恩があるが、係争海域の領有権については「交渉の余地はない」と述べた。

「中国にはこう言いたい。もめ事はごめんだ、戦争も望まない。だが、われわれに去るように言うのなら、ノーだ」

 さらに「譲歩の対象にはならないものがある、例えば撤退だ。難しい。理解してほしい。だが、私にも守らなければならない国益がある」と続けた。

 フィリピン国防省は先に、「中国には、わが国の領海においてフィリピンが何ができるか、何ができないかと口を出す権利はない」としていた。

 フィリピン沿岸警備隊は、パグアサ島(Pag-asa Island、中国名:中業島、Thitu Island)、スカボロー礁(Scarborough Shoal)北部バタン諸島(Batanes Islands)周辺、さらに南部と東部の海域で演習を実施している。(c)AFP