この写真のように、医療従事者に対して市民らが拍手で激励している姿をニュースで見たとき、複雑な気持ちになった。医療従事者の激務や疲労は計り知れないが、それ以外の人々は直接的に手伝うこともできないし、近くに行って応援することもできない。ただそのような状況の中でも、感謝や応援の気持ちを表したいという気持ちから出た行動だと思った。人々は外出を控えて、ただ祈ることしかできないというようなやるせなさを持っているが、それ以上に大変な状況下で働く医療従事者への強い気持ちを感じさせられた一枚だった。
[立教大学 大谷 千賀]

 [講評]野末俊比古(青山学院大学教育人間科学部教授)
 垂れ幕の文字を見ると、医療関係者に対する謝意を拍手で表していることがわかる。コメントにあるように、“最前線”で闘っている医療関係者を直接、手伝うことができないもどかしさを感じる一方で、じつは市民一人一人も自宅に留まるというかたちで闘っていることも確かである。街中の“前線”を守っている警察官のように、誰もがそれぞれの立場で闘っているのである。
 見えない敵に“全員”で立ち向かっていくのだという決意を感じさせる写真である。