写真中の少年は勢いよくパイプから噴き出す水で無邪気に遊んでいるように見えるのに、彼の周りの景色はすっかり焼け果てている。福祉国家である日本で生きる私たちは、たとえ火事で家が消失してしまっても、風雨に晒されながら眠らなければならないなどということはないだろう。しかしマニラのスラムに暮らす彼らの現実はそう甘くない。福祉の網の目から漏れた彼らは、焼け落ちた共同体でどう生きていくのだろうか。そんな現実に気づいているのかいないのか、一人で子どもらしく水遊びをする少年の姿が目に焼き付いて離れない。

明治大学 河野 七菜子 経済格差セクション