祖国を離れてから何度めの髭剃りなのだろう。彼はよりよい生活を求めアメリカを目指し移動している。この写真はメキシコのサポパンという市にあるシェルターで撮られたものだ。
毎日鏡を見て髭を剃る度に彼は鏡に映った自分と向き合わなければならない。今までは住み慣れた家の洗面台で家族の慌ただしい朝の支度の気配を少しうっとおしく感じながら髭を剃っていたが今の彼はその気配すら愛おしく感じているのだろうか。いつになったらこの状況は変わるんだ、自分は幸せになれるのか、いくら鏡の中の自分に問いかけても答えてはくれない。
わたしたちが毎日何気なく過ごしている日常は、彼らが喉から手が出るほど求めているものです。厳しい生活を強いられてれる移民たちが少しでも早く笑顔で溢れる毎日が送れるように祈ります。

獨協大学 中村 千春 移民セクション