白い車の走る道の両脇には、濃緑色の森が広がっている。一見すればそれは紛れもなく、インドネシアに生い茂る熱帯林だろう。しかし、これは森林などではない。人工的に植えられたそれはパーム油を生み出すアブラヤシのプランテーションである。安価で、かつ使い勝手の良いパーム油の需要はすでに想像を絶するほどに高い。食料品、化粧品、洗剤…パーム油は、人々の暮らしを支えているものの原材料であるからだ。だが、そのパーム油を生産する過程のおぞましさを知っている人はどのくらいいるのだろうか。自然の熱帯林をくまなく伐採し、プランテーションを作り上げる。そうすると、動物たちは住処を追われ、絶滅へと向かうほかない。プランテーションに隣接された工場の廃液は、メタンを生み出し地球温暖化を促進させる。さらに人間までも、パーム油生産に支配されて人権をも奪い取られてゆく。私たちは一体どこに向かっているのだろうか。自ら破滅の道を歩む愚かさに気がつくのはいつになるだろうか。自然の恵み、生命、そして地球がこぼれ落ちてゆくのをただ眺めているのか。

明治大学 長尾 澪 環境セクション