【11月26日 AFP】アイルランドに本社を置く医療機器大手メドトロニック(Medtronic)の埋め込み型医療機器(インプラント)が、米国だけで最大9300人の死亡、29万2000人の負傷に関わっている疑いがあることが25日、分かった。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が日本を含む各国での報告などをまとめ、分析結果を公表した。

 ICIJが米規制当局に昨年提出された報告を調べたところ、メドトロニック製品を使った埋め込み手術では、5件に1件の割合で何らかの問題が起きていた。この割合は競合他社の2倍だ。

 ICIJがウェブサイトで公開した報告書「インプラント・ファイル(Implant Files)」の作成には、世界36か国の記者らが協力。それによると、日本、ノルウェー、オーストラリアの当局への調査報告でも、過去5年間で最も多く苦情があったのはメドトロニックの製品だった。

 例えば、糖尿病治療に使われるインスリンポンプとその部品の場合、メドトロニック製品は米国で2008年以降に2600人超の死亡、15万人超の負傷に関連している可能性がある。

 ICIJによると、埋め込み型医療機器の品質を監督する米食品医薬品局(FDA)は、世界最大級の医療機器メーカーであるメドトロニックはそれだけ多くの機器を製造しているので、指摘される問題が最も多くても特に驚くことではないとの見解を示している。

 だがICIJは報告の中で、メドトロニック関連の訴訟や倫理違反の例を多数掲載。議論の余地があるメドトロニック社製インプラントの使用例や、同社製品を使用したり、同社製品に有利な研究に関わったりしている医師らとの疑わしい関係などを取り上げている。

 メドトロニックの広報担当者はICIJに書面で回答し、患者の福利が同社の最優先課題であり、「最も高い倫理水準の実践」を順守していると強調。また、どんな医療機器にも一定のリスクがあるとし、「疑惑は事実ではなく、メドトロニックが会社の法的、倫理的、または規制上の義務に違反したと考えるべきではない」と述べた。(c)AFP