【11月24日 AFP】フランス各地で先週末からガソリン価格の高騰と生活水準の低さに抗議するデモが相次いでいる中、ジェラルド・ダルマナン(Gerald Darmanin)公会計相(36)がデモ参加者への共感を呼び起こそうと講演で話した内容が庶民の生活感覚と懸け離れているとして批判を浴びている。

 デモに参加しているのは主に地方や小規模な市町村の有権者で、ガソリン価格の高騰やエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領の政策に対し、「黄色いベスト」を着用して道路を封鎖するなどの抗議運動を行っている。

 ダルマナン氏は22日、パリのソルボンヌ大学(Sorbonne University)で講演。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)を引き合いに出し、次のように聴衆に呼び掛けた。

「ああいった事態がわが国で起きないようにするには、私たちは(一般市民に)説明するだけでなく、話を聞いて理解しなければなりません。パリのレストランに誰かを招いて食事をすればワイン無しでも200ユーロ(約2万6000円)はする今の世の中で、月950ユーロ(約12万円)で暮らすというのはどういうことなのか、耳を傾け、理解しなければならないのです」

 さらにダルマナン氏は、「私たちが同じ社会に住んでいるとはいったい誰が信じられるでしょうか」と語り、政治家は「人々の購買力についてだけではなく、その文化的・社会的な苦しみに耳を傾ける」べきだと訴えた。

 ワインを注文せずに2人の食事代が200ユーロというのは、パリの大半のレストランで平均的なディナーの2倍以上の金額だ。ダルマナン氏の発言にネット上ではたちまち怒りの声が相次いだ。

 仏週刊誌マリアンヌ(Marianne)は、「(ダルマナン氏が)平均的なフランス国民はもちろんパリ市民からもいかに懸け離れているか、これ以上はっきりと示すのは難しい」発言だったと批判し、ワインを除いて1人100ユーロ(約1万3000円)という食事代は、高級レストランガイドブック「ミシュランガイド(Michelin Guide)」の星を獲得し、ぜいたくな暮らしをする人や有力政治家に好まれるパリの飲食店によくある価格だと指摘した。

 ダルマナン氏は昨年、保守系の共和党を離れマクロン氏の中道新党「共和国前進(REM)」に参加し、マクロン政権の中ではコミュニケーション能力に優れた人物と見なされている。フランス北部の小さな町でバー経営者の父親と清掃作業に携わる母親の間に生まれ、同政権内では珍しく労働者階級からの支持も集めている。(c)AFP