【10月27日 AFP】率直な物言いで知られ、かつて香港で司教職を務めたジョセフ・ゼン(Joseph Zen)枢機卿は25日、ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王(Pope Francis)が中国政府と歴史的合意に達したことについて、法王は中国の体制を理解していないと批判し、この合意は中国における「真の教会の消滅」につながる恐れがあると警鐘を鳴らした。

 中国国内の推定1200万人のカトリック教徒は、「家庭教会」や「地下教会」と呼ばれる、バチカンに忠誠を誓う非公認の教会に通う信者と、共産党が聖職者を選任する政府公認の教会を訪れる信者とに分かれている。

 バチカンと中国は1951年以来、外交関係を結んでいないが、中国国内での司教任命をめぐる先月の合意により、関係回復への道が開かれた。またフランシス法王は合意の一環として、中国によって任命された司教7人を承認した。

 だが、この歴史的合意についてゼン枢機卿は、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)国際版への寄稿で、法王は中国に対して譲歩し過ぎてしまい、合意の結果、中国政府によってカトリック教徒が迫害される下地がつくられたと批判。「合意は実のところ、中国における真の教会の消滅に向けた大きなステップだ」と主張した。

 さらに「私が風刺漫画家なら、法王がひざまずき、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席に天国の鍵を差し出して、『どうか私を法王として認めてください』と言っている絵を描くだろう」との見解を披露した。

 また法王はアルゼンチン出身であるため、「共産主義について生来、楽観的な考えを持っている」とも指摘し、その結果、中国を統治する共産党に信を置くという過ちに至ったと述べるとともに、「中国の共産主義者がそうであるように、彼らは一度権力の座に就いたら迫害者になるということを知らないのだ」とも主張している。(c)AFP