【8月14日 AFP】ラグビーのオールブラックス(All Blacks、ニュージーランド代表)が試合前に披露する先住民マオリ(Maori)伝統の舞「ハカ(Haka)」について、元代表選手らからやりすぎで価値が薄れているとの批判の声が上がったことを受け、現指揮官のスティーブ・ハンセン(Steve Hansen)ヘッドコーチ(HC)が反論した。

 W杯(Rugby World Cup)王者のニュージーランド代表は、テストマッチの前に必ずハカを披露し、足を踏み鳴らして胸をたたくのが恒例になっているが、オールブラックスで活躍した元PRケース・ミューズ(Kees Meeuws)氏が、この伝統に疑問を投げかけた。

 ミューズ氏は最近刊行された英作家の著書「The Jersey」の中で、「ハカはマナ(権威)を失い、ただのショーになってしまった」と嘆き、「確かにハカを行うべきテストマッチはあるが、すべてじゃない。今のチームは年に14試合もテストマッチを戦うし、そのすべてでハカをやるのは多すぎだ」と話している。

 またこの本では、2017年に死去したオールブラックスの伝説的選手、コリン・ミーズ(Colin Meads)氏の生前の言葉も紹介されていて、それによるとミーズ氏も「どこもかしこもハカだらけ。今もそうだ」と話し、ミューズ氏の批判に同調している。

 一方、チームを率いるハンセンHCは擁護派。ハンセンHCは、テストマッチ前のハカが相手を威圧する道具になっているという批判を退け、オールブラックスの伝統だと主張している。

「ハカの目的は以前と何ら変わっていない。ハカは試合の開始に欠かせないものであり、チームにとって大きな意味を持っている。彼らもそれは十分に理解しているだろうし、われわれも、ハカが他の誰のためでもない、自分たちのためのものだということを理解している。われわれはそこから大きなパワーを引き出しているんだ」

 もともとハカは、国外開催の特定の試合前に披露されるものだったが、現在ではオールブラックスのすべての国際試合で行われている。さらに今は、1905年に初めて舞ったときから採用されている「カ・マテ(Ka Mate)」と、それから1世紀後、特別にオールブラックスが舞うことが許可されるようになった「カパ・オ・パンゴ(Kapa o Pango)」の2バージョンが用意されている。

 また、過去には対戦相手が脅しには屈しないという態度を取り、一触即発になることもあった。有名なのは敵地で行われた1989年のアイルランド戦で、このときはハカを舞うオールブラックスの面々にアイルランドの選手がにじり寄り、最後は主将同士が目の前でにらみ合った。1991年のW杯準決勝のオーストラリア戦では、オーストラリアのデビッド・キャンピージ(David Campese)氏がハカをあからさまに無視した。

 最近では、2011年W杯ニュージーランド大会決勝のフランス対オールブラックス戦で、フランスの選手たちがV字をつくってニュージーランド側の陣地に侵入し、罰金を科された。この処分は、ハカに「敬意を欠く」行為に対して関係者が敏感になりすぎているとの批判を呼んだ。(c)AFP