【6月20日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領はこのほど、「ドイツで犯罪が大幅に増加している」とツイッター(Twitter)に投稿し、その背景に移民の存在があるとの考えを示唆した。しかし、先月発表された公式の統計によれば、ドイツの昨年の犯罪率は1992年以降で最低を記録している。

■検証の対象

 トランプ氏のツイート:「ドイツでは、移民問題が既に危うい状況にある連立政権に揺さぶりをかける中、国民は指導層に背を向けつつある。ドイツ国内の犯罪も大幅に増加している。欧州全体の大きな失敗は、移民を数百万人受け入れるのを許したことだ! 彼らは欧州の文化をめちゃくちゃにした」

■分かっている事実

 ドイツのホルスト・ゼーホーファー(Horst Seehofer)内相が5月に発表した公式の統計によれば、2017年の犯罪率は1992年以来の低水準を記録した。

 この統計によると、警察が発表した昨年1年間の犯罪は前年比5%減となる576万件。一方、1994年は654万件だった。

 トランプ氏のツイートでは、犯罪の増加に移民が関係しているとの考えも示唆されていた。しかし、データが示しているのはそれほど単純化できる話ではない。

 ドイツに100万人以上の移民がたどり着く以前の2014年に記録された年間の犯罪件数は608万件で、昨年のものよりも多かった。しかし、犯罪件数は移民の流入がピークに達した2015~2016年に微増している。

 この間、外国人容疑者の割合が増えている。公式統計によると、全犯罪に対する外国人による犯罪の割合は2014年で28.7%だったが、2016年には40.4%に上昇し、2017年には再び35%近くまで減少した。

 ゼーホーファー内相の報告によれば、2017年に発生した外国人犯罪のうち27.9%は欧州連合(EU)加盟国以外の国々の出身者によるものだった。2017年の犯罪記録件数全体でみると、その割合は8.5%、2016年は8.6%だった。

■導き出せる結論

 ドイツの犯罪率は一般的に言えば、上昇しているわけではなく、むしろ減少している。これは、トランプ大統領のツイート内容とは正反対だ。

 確かに、外国人犯罪の割合自体は上昇している。しかし、その原因が特に2015年以降ドイツに入国した100万人以上の移民にあると明言することは難しいのが現状だ。(c)AFP