【6月16日 AFP】2009年のフォーミュラワン(F1、F1世界選手権)王者で2016年に第一戦を退いていたジェンソン・バトン(Jenson Button)は、初出場を果たしている第86回ルマン24時間耐久レース(Le Mans 24 Hour Race 2018)で、時速500キロメートルにも及ぶ「別次元のスピード」に大きなスリルを味わっている。

 ロシア企業傘下のSMPレーシング(SMP Racing)からFIA世界耐久選手権(WEC)に参戦しているバトンは、元F1王者でマクラーレン(McLaren)時代のチームメートであるフェルナンド・アロンソ(Fernando Alonso)とともに今大会で注目ドライバーの一人となっているが、レース本番を待ち望む一方で夜間走行に関して慎重な姿勢を示しており、「夜は2周だけであとは昼間だったから、あまり走っていないとはいえ難しいレースであることは理解できる。それでも、そのうち暗闇に慣れていくだろう」とコメントした。

 バトンが特に最大の難関として指摘したのは「ポルシェ・カーブ」で、「あれは本当に衝撃的だ!夜だと時速500キロメートルにも感じる。ブルーライト(追い越しの合図)にも本当に驚いている。目と脳が慣れるのに時間がかかるはずだ」と話した。

「F1とはまったく違う。一番驚いたのは高速コーナーでのスピードだ。あれはすさまじい。『Sポルシェ』のセクターでは、スピードが別次元だ。あそこでレースを観戦する機会があったら、行ってクルマが通り過ぎるのを見るといい」

 インディカードライバーのミカエル・アレシン (Mikhail Aleshin)と元F1レーサーのビタリー・ペトロフ(Vitaly Petrov)とタッグを組むことになった38歳のバトンは、ルマンで走ることが長年の夢だったとしており、「ドライバーにとって、ルマンは特別なものであり、あれほどの高速マシンを駆るのは最高だ」と話した。

 バトンはまた、日曜日(17日)のゴールではアロンソが操縦するトヨタ・ガズーレーシング(Toyota Gazoo Racing)が優勝すると予想されるなど、トヨタ勢に追いつくのは事実上不可能だとの見解を示している。

「彼らは走っていないときがないんだ!何度もテスト走行して信頼性を確認している。ここに来るまで、いったいどれくらい24時間レースを完走してきたのか想像もできないよ。(トップカテゴリーの)LMP1のなかでも、彼らのレベルはほかのチームとは一線を画している。だけど、24時間レースはどのクルマにとっても究極だ。クルマがハイブリッドであれば、なおさらのことだね」

 バトンとともにレースでスポットライトを浴びるとみられるアロンソは、これまでグラハム・ヒル(Graham Hill)氏しか成し遂げていないF1のモナコGP(Monaco Grand Prix)、インディカーシリーズのインディアナポリス500(Indianapolis 500)、そしてルマン24時間での「三冠」を目指しており、今レースで勝てばその快挙に王手をかけることになる。

 一方、コロンビア出身のファン・パブロ・モントーヤ(Juan Pablo Montoya)も「三冠」を狙っているドライバーの一人で、これまで2003年のF1モナコGPに加え、2000年と2005年のインディ500を制した実績を持っており、今回はフランスのクラシックレースに初出場を果たしている。

 現在42歳のモントーヤは、「三冠」を目指してレースに臨むか問われると「チャンスが到来したら、イエスだ」とすると、「だけど、そうならなくても自分としてはオーケーだ。自分の人生は三冠を中心に回っているわけではないからね。これまでルマンの経験はなくて、きっと楽しい体験ができると自分に言い聞かせていた。ここに来たのはそれが理由だ」と話した。

 ルマン決勝は16日(日本時間の同日午後10時)にスタートする。(c)AFP/Raphaëlle PELTIER