【5月7日 AFP】カンボジア最後の独立系英字紙と言われていた「プノンペン・ポスト(Phnom Penh Post)」が、マレーシアの投資家に売却されたことが明らかになった。カンボジアでは今年7月の総選挙を前に強権的な指導者であるフン・セン(Hun Sen)首相がメディア弾圧を強めており、報道機関に動揺が走っている。

 創刊26年になる同紙のオーストラリア人オーナー、ビル・クラフ(Bill Clough)氏は5日の声明で、マレーシアの投資家「シバクマール・G(Sivakumar G)」氏に同紙を売却したと発表。ただ、売却価格や新しいオーナーの他の事業に関する情報は明らかにしなかった。

 しかしAFPが取材した関係筋によると、新オーナーはクアラルンプールを拠点とするPR企業「アジアPR(Asia PR)」の最高経営責任者(CEO)だという。さらに同社のウェブサイトには元顧客としてフン・セン首相の名前が掲載されている。

 7月に総選挙を控えるカンボジアではフン・セン首相率いる政府が独立系メディアやNGO、政敵などを弾圧していると非難されている。また、昨年8月にはプノンペン・ポストのライバル紙だった「カンボジア・デイリー(Cambodia Daily)」が支払い不可能な税金を課されて閉鎖に追い込まれており、今回のプノンペン・ポスト売却を受け、独立系メディアの領域がさらに縮小するとして同国の報道業界には懸念が広がっている。

 プノンペン・ポストの元編集者でフリーランス・ジャーナリストのアビー・セイフ(Abby Seiff)氏は「プノンペン・ポストは最後に残っていた日刊紙で、汚職や違法伐採、政治について長期的な調査を行っている」と指摘し、「今回の売却がどういう意味を持つのか、報道業界は懸念している。総選挙まで2か月しかない状況で独立系メディアはほとんど残っていない」と懸念を示した。(c)AFP