【4月4日 AFP】サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)を控え、ロシアの内務省は海外からの渡航者に対応する「ツーリストポリス(観光警察)」として英語が話せる警察官の募集を開始した。語学能力としてはフランス語、スペイン語に加えて中国語が話せれば、なお好ましいとされている。

 今年6月14日から7月15日に開催されるW杯で大勢の観光客が訪れることについて、外国人観光客に慣れていない地方の開催都市では期待と不安が入り交じった状況となっている。レストランやホテルの所有者にとっては一生に一度のビジネスチャンスとして喜ばしいことではあるものの、大会期間中に32か国に及ぶライバルチームのファンが押し寄せるため、その安全確保などの治安サービスが不安視されている。

 ロシアでは首都モスクワやウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の出身地サンクトペテルブルク以外、英語が通じる土地が限られているため、外国語は特に大きな問題となっている。警察のイリーナ・ボルク(Irina Volk)報道官は2日、「観光警察のユニットは、外国語が話せる各都市の警察官で構成される。必要な場合は、各自について追加トレーニングを実施する」と述べた。

 現時点で外国語が堪能な警察官の人数などは明らかにされていないなか、報道官は計11か所の開催都市で5月25日からスタジアムやファンゾーンに観光警察を配置すると発表した。

 ロシアの典型的な警察官は、これまで地元住民に対して悪いイメージを持たれており、通りで身元確認を行う際には威圧的な態度を取ったり、平和的な抗議活動に対しても武力を行使したりすることがある。しかし現在は、西側諸国と新たな外交問題を抱えていながらも、観光客を温かくもてなす国というイメージづくりに躍起になっている。

 こうしたご機嫌取り作戦は2014年のソチ冬季五輪から開始され、昨年のコンフェデレーションズカップ(Confederations Cup 2017)でも続けられた。ここ4年間のモスクワでは、大統領府(クレムリン、Kremlin)周辺の最も人気があるスポットで観光警察が巡回している。

 これまで何度もロシアを訪れている観光客は、通りに英語表示がほぼ一つもないことに気づいて仰天していたが、欧州最大の都市の一つとしてにぎやかなモスクワでは、昨年のコンフェデレーションズカップで地下鉄の駅名に英語表示が導入されている。さらに、今後は切符売り場に目立つステッカーを張り、英語が通じるスタッフが常駐していることをアピールするほか、スタジアムへの行き方や現地での案内表示が設置されていくという。

 ほかの都市でも、徐々にバスや路面電車で英語のアナウンスが導入されているものの、ほとんどの通りはロシア語の表示しかなく、W杯までに変更していく時間もないとみられる。(c)AFP/Dmitry ZAKS