【4月3日 AFP】サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)を控える同国サッカー界は、ファンが黒人選手をターゲットに人種差別的なやじを浴びせるなどの新たな人種差別スキャンダルに見舞われており、同国政府が本腰を入れた対応を迫られている。

 今年6月14日から7月15日まで開催されるサッカーの祭典を控える中、3月27日に同国サンクトペテルブルク(St. Petersburg)で行われたフランスとの国際親善試合では、フランスのポール・ポグバ(Paul Pogba)とウスマン・デンベレ(Ousmane Dembele)を標的にした悪質な人種差別行為がみられた。

 AFPのカメラマンがスペイン1部リーグのFCバルセロナ(FC Barcelona)に所属するデンベレに向けた猿の鳴き声をまねたやじを耳にした一方で、インターネットでは5万人が詰め掛けた観客席の一部から、イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)でプレーするポグバに対する同様のやじがあったと投稿された。

 フランスのローラ・フレセル(Laura Flessel)スポーツ相が、「欧州及び国際」的な対応を求めたことを受け、国際サッカー連盟(FIFA)は調査を開始。ロシアサッカー連合(RFS)は、治安委員長のウラジーミル・マルキン(Vladimir Markin)氏が当日の試合を検証した結果、「そうしたやじに関しては、聞こえなかったし録音もされていなかった」と述べるなど当初は懐疑的な態度を示していたものの、同国の元サッカー選手で人種差別行為を取り締まるアレクセイ・スメルティン(Alexei Smertin)氏は、RFSがすでに調査を行っていることを明らかにした。

 ロシア自由民主党(LDPR)の議員でRFSの執行役員も務める熱烈なスポーツファンのイゴール・レベデフ(Igor Lebedev)氏は、サッカー界が人種差別問題にほとんど取り組んでこなかったことを指摘しており、地元のスポーツニュースサイトに対して、「ファンには、こうした行為をやめてもらいたい」と訴えた。

「これは、わが国のファンによるアフリカ系米国人や黒人選手に対する認識の問題というだけではない。この問題はどこにでもある。こうした悪質な行為は、制裁が加えられなければ何一つ止まらない」

 ロシアにおける差別行為の歴史は旧ソ連時代にまでさかのぼり、この問題が正面から取り組まれることはほとんどない。外国と壁をつくる国家主義者や社会保守的な大統領府(クレムリン、Kremlin)のイデオロギーが融合したことにより、こうした行為が助長されたと批判する声が上がっている。

 レベデフ氏はさらに「国の威信」という国民の愛国心と誇りに訴えて、「母国に恥をかかせたいのか?」と述べた。