【3月13日 AFP】2016年の米大統領選や前年の英総選挙の結果が事前の予想を覆す結果となったことを受けて、英米の研究者が1942年までさかのぼって過去の世論調査を調べたところ、最近になって精度がとくに落ちたことはないと確認された。世論調査が当てにならなくなってきたという一般通念に反する事実が示された格好だ。12日、英科学誌「ネイチャー・ヒューマン・ビヘイビア(Nature Human Behaviour)」に発表した。

 前回の米大統領選では大半の世論調査で民主党のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏の勝利が予想されていたが、実際に当選したのは共和党のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏だった。

 また2015年の英総選挙は、単独で過半数を獲得する政党のない「ハングパーラメント(中ぶらりんの議会)」になる見通しとされていたが、結果は保守党の圧勝だった。

 こうした事態を受けて世論調査に対する不信感が広がったことから、英サウサンプトン大学(University of Southampton)のウィル・ジェニングス(Will Jennings)氏と米テキサス大学(University of Texas)のクリストファー・ウルジェン(Christopher Wlezien)氏は、選挙前の世論調査の精度を検証した。

 1942年から2017年までに45か国で実施された351の総選挙について、3万件を超える有権者の意向調査を分析。その結果、一般に考えられているのとは異なり、最近の世論調査結果が特に異質ということはないと判明した。

 両氏は論文で「世論調査業界にはさまざまな難題が突き付けられてはいるが、その精度が危機的状況にあるとの主張を裏づける証拠はなかった」としている。

 許容できる誤差は、調査対象の75年間を通じておおむね同じだったという。

 大きな番狂わせとなった16年の米大統領と15年英総選挙時の世論調査でも、誤りの大きさは「特に異例なものではない」と結論づけている。

 両氏は、世論調査の誤りが増えたのではという懸念には、対面や電話でのインタビューなど伝統的な手法に代わってオンラインの手軽な調査が増えていることなどを踏まえると十分な根拠があると指摘。その一方で、世論調査機関は精度を高めるために加重などの方法を導入するなど、変化に対応しているとも評価している。(c)AFP