【3月2日 AFP】アフリカ東部ケニアの首都ナイロビ郊外にあるナイロビ国立公園(Nairobi National Park)で、園内を横断する鉄道の建設工事が始まり、自然保護団体などが怒りの声を上げている。中国資本の鉄道建設はケニア独立以来最大のインフラ整備事業として進められてきたが、国立公園内への延伸をめぐっては2016年から訴訟が相次ぎ、裁判所の中止命令を無視しているとして政府は批判されている。

 ナイロビ国立公園は、高層ビルが立ち並ぶ市中心部からわずか7キロの距離に広がる大自然の中をライオンやハイエナ、キリンなどが闊歩(かっぽ)することで名高いが、急成長する大都市と、それに伴うインフラ需要の圧力の高まりに直面している。

 国立公園の敷地内では先週、中国の国営企業、中国路橋(CRBC)が複数のクレーンや重機を運び込み、立ち入り禁止区域を設置。武装した監視員らに守られて多数の作業員が忙しく働き始めた。

「私たちが目撃しているのは、思い通りにしようと躍起になり、裁判所を無視してまで建設事業を遂行している政府の姿だ」と、ケニア政府を訴えている動物保護団体「ワイルドライフ・ダイレクト(Wildlife Direct)」の法務担当者ジム・カラ二(Jim Karani)氏は述べた。

 鉄道延伸建設の開始を受け、1日に開催された抗議集会に参加した保護活動家の一人は「政府が堂々と法律違反を犯すなんて、とても残念だ」と話した。

 問題となっている鉄道は、第1段階としてインド洋に面した港湾都市モンバサ(Mombasa)からナイロビ国立公園の東側にあるターミナルまでを結ぶ路線が2017年に完成。第2段階として、国立公園内を横断する延伸路線を建設し、これを核にゆくゆくは近隣諸国との間をつなぐ路線網を築き上げるのがケニア政府の狙いだ。

 計画では、公園内に長さ6キロにわたって高さ8~40メートルの支柱を立て、鉄道を通す。当局は、風景に溶け込むよう支柱にカモフラージュを施し、騒音対策もして動物たちが自由に行き来できるようにすると説明している。

 だが、自然保護団体などは2016年、環境アセスメントの実施方法をめぐってケニアの国家環境裁判所(NET)に政府を提訴。NETは法律に基づき訴訟の結論が出るまで建設を中止するよう命じたが、政府は昨年、この法律を改正する動きに出た。反対派は法改正の差し止めを高等裁判所に請求し、差し止め命令が出ている。(c)AFP