【12月8日 AFP】南太平洋のニューカレドニア(New Caledonia)に生息するカラスは、小枝をかぎ針のような形に細工して、穴の奥に潜む昆虫を捕らえるのに役立つ道具を作り出す能力を持つことで知られている。だが、このカラスが経験を積むと、この道具作りに対して「手抜き」をする可能性を指摘した研究結果が7日、発表された。

 この道具を作る際に、若いカラスは細心の注意を払ってくちばしを駆使するが、年を取って知恵を身につけたカラスは手順を簡略化して手っ取り早く作る傾向がある。

 米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された論文によると、若いカラスでは、くちばしを使って木の枝を丹念に折ったり切ったりする傾向がみられたが、老練なカラスほど、枝を引き抜くだけといういいかげんな作り方をしていた。結果、昆虫を引っかける「フック」(かぎ)の部分の構造がより浅かった。

 論文の主著者で、英セントアンドルーズ大学(University of St Andrews)のクリスチャン・ルッツ(Christian Rutz)教授(生物学)はAFPの取材に対し、フックが深い道具を作るためには時間や労力といったコストが余分にかかるだろうが、経験を積んだ成鳥はこのコストを回避していると考えられると語った。

 深いフックは、昆虫をより速く穴から引き出すためには役立つが、「狩り」のあらゆる状況において最善とは言えないかもしれない。「例えば、非常に狭い穴や隙間に差し込むと、(フックが深い方が)より簡単に壊れてしまう可能性がある」と、ルッツ教授は説明した。

 南太平洋に位置するフランスの海外地域ニューカレドニアを原産とする特定のカラスが、道具作りに関して持つ並外れた能力は、科学者らを長年驚嘆させてきた。

 イルカ、ゾウ、チンパンジーに加え、他の鳥類でも道具を使う例が明らかになっているが、かぎ状の道具を作るのはこのカラスだけだという。

「われわれが知る限り、かぎ状の道具を作ることができるのは、自然界の中でニューカレドニアのカラスと人間だけだ」。ルッツ教授はさらにこう続けた。「かぎ状の道具の発明は、人類の技術的進化における大きな節目となっている。そのためニューカレドニアのカラスは、こうした道具のデザインが生まれる過程や、技術の段階的な進歩について調査する絶好の機会を提供している」(c)AFP