【12月8日 AFP】人類がアフリカを出て移住したのは約6万年前の一度だけという説はもはや正確な人類史とは考えられないとする研究報告が7日、米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 研究によると、現生人類の拡大をもたらしたのは、約12万年前から始まった複数回にわたる移住だ。

 DNA分析や化石同定技術の発達、とりわけアジア地域における発見が、人類の起源についてのこれまでの認識を見直す一助となっている。

 研究によると、現生人類ホモ・サピエンス (Homo sapiens)がアジアに到着したのはこれまで考えていたよりずっと前であることが、過去10年間の「大量の新発見」で明らかになったという。

 中国の南部と中央部の複数の場所で、約7万~12万年前のホモ・サピエンスの化石が見つかっている。また発見された他の化石は、現生人類が東南アジアとオーストラリアに到着したのは6万年前よりもっと前であることを示している。

 独マックス・プランク人類史学研究所(Max Planck Institute for the Science of Human History)の研究員、ミヒャエル・ペトラグリア(Michael Petraglia)氏は「約6万年前よりも前にアフリカを出た人類の最初の拡散は採食者の小さな集団によるもので、現生人類に少なくとも低レベルの遺伝的痕跡しか残していない」と指摘する。同氏によると、その後の大規模な「出アフリカ」が約6万年前かその後に起きた可能性がある。

 今回の研究報告によると、この約6万年前の大移動が「非アフリカ系現代人の遺伝的構成の大部分に寄与している」ことが最近の研究で確認されている。

 この初期の移住でネアンデルタール人(Neanderthals)やデニソワ人(Denisovans)を含めた他の人類種などとの交配が、ユーラシア大陸の多くの場所で起きた。科学者らの推定によると、非アフリカ系現代人は、DNAの1~4%がネアンデルタール人に、5%がデニソワ人に由来するものだ。

 研究は、現生人類、ネアンデルタール人、デニソワ人とおそらく他の人類種集団がアジアで時間的および空間的に重なり合い、数多くの交流があったことは明らかだとしている。(c)AFP