【11月30日 AFP】ドイツの裁判所は29日、元ナチス・ドイツ(Nazi)の親衛隊(SS)隊員で禁錮4年の判決を受けていたオスカー・グレーニング(Oskar Groening)被告(96)に対し、健康上の問題はないとして刑務所への収監命令を下した。戦後70年以上が経過し関係者の高齢化が進む中、異例の判断となった。

「アウシュビッツの簿記係」(Bookkeeper of Auschwitz)の異名で知られるグレーニング被告は、第2次世界大戦(World War II)中にナチスの強制収容所で犠牲となったユダヤ人ら30万人の殺人幇助(ほうじょ)罪で起訴され、2015年7月に禁錮4年の有罪判決を受けた。

 グレーニング被告は上訴し、独連邦通常裁判所が2016年にこれを棄却すると、今度は刑の執行猶予を請求。有罪となった後もずっと自宅で生活してきた。だが、独検察当局は今年8月、適切な看護・医療ケアを受ければグレーニング被告は4年間の収監に耐え得るとの医師の診断結果を発表していた。

 ドイツ北部ツェレ(Celle)の上級地方裁判所は29日、「専門家の見解に基づき、被告は高齢ながら実刑に服すだけの体力があると判断した」と説明。高齢ゆえの特別な配慮が必要になった場合に備えて「適切な予防措置」を取るため、収監は被告の基本的人権を侵害しないとの見解を示した。

 グレーニング被告はアウシュビッツ強制収容所で簿記係として働き、殺害されたり強制労働を科されたりした収容者から没収した金銭の仕分け・集計と、ベルリンにいるナチス上層部への送金に従事していた。また、家畜運搬用の貨物列車で収容所に送られてきたユダヤ人らを「仕分け」する作業にも数回携わっていたとされる。(c) AFP/Hui Min NEO