【11月23日 AFP】ロシアの北極圏東部で、ホッキョクグマ約200頭が山腹をうろついているのが、船で周辺を移動していた観光客らによって目撃された。観光客らは最初、海岸近くに氷が点在していると思ったという。

 ホッキョクグマが1か所にこれだけ集まっていたのが目撃されたのは今年9月、東部ウランゲリ(Wrangel)島自然保護区で、保護区の責任者アレクサンドル・グルズデフ(Alexander Gruzdev)氏は、「極めて珍しい状況だった」と語り、「正直言ってぎょっとした」と明かした。

 ホッキョクグマの集団は、岸に打ち上げられた1頭のホッキョククジラの死骸を目当てに集まり、食べ終わった後はその周りでくつろいでいたとみられる。AFPの取材に応じたグルズデフ氏によると、ホッキョクグマの集団の中には家族も多く、めったに見ない4頭の子どもをそれぞれ連れた母グマ2頭もいたという。

 ホッキョクグマは海氷の上で大半を過ごしているが、地球温暖化などの気候変動により1年のうちでも氷が解けるのが早く、陸地の上で過ごす時間が増えていると科学者らは指摘している。

 こうした場面に遭遇した観光客は感嘆するかもしれないが、沿岸や島に身を寄せ合って過ごさなければならなくなったホッキョクグマたちにとっては、陸上の少ない食料をめぐる争いが激化することを意味する。また、地元住民は空腹のホッキョクグマが村に入り込んでくるなどの危険にさらされることにもなる。(c)AFP /Maria ANTONOVA