【10月18日 AFP】2000年以上前に噴火した火山からの大量の噴出物が空を覆ったことで、ナイル(Nile)川の源流が枯れ、古代エジプト最後の王朝の滅亡を早めたとの研究結果が17日、発表された。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された研究論文によると、紀元前3世紀と紀元前1世紀に起きた、過去2500年で最大級の一つを含む噴火は、穀物の不作、大規模な反乱、エジプト軍の戦場からの撤退と発生時期が一致しているという。

 研究者らはこれまで、これら歴史上の出来事についての明確な答えを出すのに頭を悩ませていた。

 ネイチャー・コミュニケーションズ誌は論文要約記事の中で「火山の噴火は、古代エジプト王朝プトレマイオス朝(紀元前305~同30年)の最終的な崩壊において中心的な役割を演じた可能性がある」と指摘している。

 また、太陽光の一部を遮ったこの火山の噴火は、数十億個の微粒子を成層圏に投入して地球温暖化に対抗する気候工学とその仕組みが同じであるため、研究結果は、この考え方におけるリスクを浮き彫りにしたと論文の執筆者らは述べている。

 気候工学を用いた対策案の一つである「太陽放射管理(SRM)」によって地球の気温は1~2度下がるかもしれないが、他方で降雨パターンに重大な混乱が引き起こされる恐れがあることは否めない。

「プトレマイオス朝の火山噴火に対するもろさは、モンスーンに依存した農業を営む地域のすべてに警告を発している」と、論文の執筆者らは記している。現在、モンスーン依存型の農業地域には世界人口の70%が暮らしているという。

 プトレマイオス朝はその統治時代の大半で繁栄していた。その背景には、沈泥豊富なナイル川の夏季の出水が河岸に連なる広大な穀物畑全域を育んでいたこと、9月に川の水が引いた後は、水路と堤防の精巧なシステムで水を貯蔵していたことなどがある。