【10月13日 AFP】タコといえば、伸びたり曲がったり、表面の形が変わったりと「擬態の達人」として知られるが、この知能の高い頭足類に触発されて同様のカモフラージュ機能をもった新素材を開発したと、米工学研究チームが12日、米科学誌サイエンス(Science)に発表した。

 研究チームの説明によると、この新素材はシリコン製の皮膜で、表面に伸縮性があり、プログラミングされた立体(3D)形状に応じて表面のモーフィング(連続的で滑らかな変化)が可能だ。

 論文の主著者である米ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)のジェームズ・ピクル(James Pikul)准教授(機械工学・応用力学)は、「(タコやイカなどの)頭足類が皮膚の質感を非常にうまく変化させている点に引かれ、それをコントロールしている筋肉を研究して着想を得た。そのアイデアを、柔らかく伸縮性のある素材の形状を操作する手法に応用した」と述べている。

 新素材の形状を変化させるのに用いられている3Dバンプ(凹凸)は、わずか5分の1秒の速さで行われるタコやコウイカの擬態を可能にしている体表の極小サイズの突起に似ている。新素材のコーティングに組み込まれた繊維の中の空気が膨張すると、表面はプログラムされた新たな形状に変化する。

 開発チームではこの新素材について、自然環境での調査や動物研究に使われるソフトロボットを覆う素材として将来利用できる可能性があるとしている。伸張可能なこの素材でロボットを覆えば、ロボットを攻撃から隠したり守ったりするのに役立つと考えられる。危険区域に接近する軍事ロボットにも転用できそうだ。(c)AFP