【7月7日 AFP】日本政府と欧州連合(EU)は6日、経済連携協定(EPA)交渉の大枠合意に至った。ドイツで7日に開幕する20か国・地域(G20)首脳会議を前に、「米国第一」を掲げるドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の保護貿易主義に真っ向から挑戦する動きと言える。

 日本とEUの経済規模は、合計すると全世界の国内総生産(GDP)の4分の1を上回る。この両者によるEPAは、史上最大級の貿易協定の一つだ。

 6日、ブリュッセル(Brussels)で行われた日欧首脳会談後の共同記者会見で、欧州委員会(European Commission)のジャンクロード・ユンケル(Jean-Claude Juncker)委員長は「きょう、(日本との)EPAに原則合意した。その影響は我々の地域にとどまらないだろう」と述べた。

 安倍晋三(Shinzo Abe)首相は、独ハンブルク(Hamburg)で数時間後に始まるG20を前に、EUと日本が自由貿易をリードするための強い政治的意思を示すことができたと語った。

 ただ、これからさらに細かい詰めの交渉に入る日欧EPAの前途は、容易ではなさそうだ。

■日欧EPAの意義は?

 EUが求めているのは、世界第3位の経済大国の市場へのアクセスだ。人口約1億2700万人の日本の経済規模は、欧州最大を誇るドイツ経済より1.3倍ほど大きい。

 一方、成長が頭打ちとなって久しい日本側は、経済を再活性化するきっかけを必要としており、世界でも消費者の経済レベルが高い欧州への自動車輸出に期待を寄せている。また、トランプ米大統領の離脱宣言で出鼻をくじかれた12か国による環太平洋連携協定(TPP)の失敗を経て、大きな機会をものにしたい思いもある。

■チーズと自動車

 EU側にとっての重要項目は、強力に保護されてきた日本の酪農市場へのアクセス拡大だ。EU圏の酪農産業は、需要が超低水準な中での過剰供給というアンバランスのため深刻な危機にあり、酪農家らの不満が欧州における反グローバル化の機運に勢いを与えてきた。

 EU側は広範囲の農産物について、日本の関税引き下げを要求してきた。今回の合意によって、EUが保護する約200品目に日本の市場への自由アクセスが認められることになる。

 一方、自動車分野では、EUが日本車にかけている10%の関税を協定発効後7年で段階的に撤廃する。これに対し日本側は、非関税障壁の一つとなっている安全・環境基準において国際基準を受け入れ、欧州車の日本進出に対するハードルを下げる。

■投資裁判所

 両者の間に以前、大きな食い違いがあるのが、投資をめぐる紛争処理の手続きだ。これまで国際貿易における紛争は、民間の仲裁機関を通じて解決が図られてきた。だが、欧州ではこの制度への反発が強く、EUは各国の公務員で構成する投資裁判所制度を貿易相手国に提案しているが、実現はしていない。

 日本側は従来の制度にこだわっており、交渉難航の要因となっている。

■批准プロセス

 EU側は年内の完全合意を目指しているが、合意に達したとしても、非常に複雑な批准プロセスが待っている。

 EUは日欧EPAが、NGOの批判やベルギーのフランス語圏ワロン(Wallonia)地域の議会の反対で合意前に崩壊の危機に見舞われたEU・カナダの自由貿易協定(FTA)の二の舞となることを恐れている。大規模な協定ではEU加盟各国と欧州議会に、それぞれ承認するか、否決するかを決める機会が与えられるため、批准プロセスは長期化し、難航する可能性がある。(c)AFP