【6月26日 AFP】(訂正)食肉や農作物を農場から食卓まで追跡して食の安全性や在庫管理の強化を図るため、食品業界では現在、仮想通貨「ビットコイン(Bitcoin)」で使われている技術に注目が集まっている。

 この技術は「ブロックチェーン」と呼ばれるもので、取引の履歴を多数のコンピューターで共有することを可能にするデジタル技術だ。

 米小売り大手ウォルマート(Wal-Mart)はコンピューター大手IBMと協力して、米国産マンゴーや中国産の豚肉で、この技術を試している。同社のフランク・イアナス(Frank Yiannas)氏(食品安全担当)は、「デジタルで透明性のある食品システムを構築する大きな可能性がある」と語る。

 ブロックチェーン技術を使うことで、サプライチェーンの関係者間で、家畜の食肉解体日や作物収穫時の天候といった詳細情報を共有することも可能になるという。

 米市場調査会社IDCのビル・ファーンリー・ジュニア(Bill Fearnley Jr.)氏は、「ブロックチェーンの利点は、台帳がすぐに更新され、すべての関係者が最新の情報にアクセスできること」と語る。

 ブロックチェーンを支持する人々は、特にサルモネラ菌などの食品安全上の問題への対策に有効と指摘する。イアナス氏によると、問題が起きた場合、同技術により発生源の特定を迅速に行えるため、企業側はより効果的な対応が可能となるのだという。

 イアナス氏は2006年に起きたホウレンソウの問題を事例として引き合いに出し、ブロックチェーンの有効性を説明。当時の紙ベースのシステムでは、問題の原因を突き止めるために調査官数百人と2週間という期間が必要だったが、ブロックチェーンを活用することで、こうした追跡は数秒で済むとした。「食品の追跡は正確であればあるほど良い」と同氏は話す。

■透明性の向上

 ブロックチェーンの別の大きな利点としては、透明性の向上が挙げられる。遺伝子組換え作物や人工の原材料についての不安が高まる中、消費者はそれぞれ商品の由来について重要な情報を知ることができる。

 企業の活動が適切であることも確認可能となる。英ITスタートアップ企業プロバナンス(Provenance)は、インドネシアで漁獲されたマグロが「適切な漁業」によるものだと証明するために、ブロックチェーン技術を活用した。

 他方で、デンマーク海運大手A.P. モラー・マースク(A.P. Moeller-Maersk)は、この技術によって不正と誤配送をなくすことにより、数十億ドル規模の節約が可能になるとみている。同社は現在、ケニア・オランダ間のコンテナ船でこの技術を実験中だ。(c)AFP/Luc OLINGA