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カタール断交で家族離散の危機

2017年6月15日 13:26 発信地:ドーハ/カタール

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カタール断交で家族離散の危機
カタールの首都ドーハにあるハマド国際空港(2017年6月12日撮影)。(c)AFP/KARIM JAAFAR

【6月15日 AFP】生まれてこの方、ほぼカタールで暮らしてきたラシェド・ジャラマさん(22)は、今ある決断を迫られていた。この国に残るか、バーレーンの「故郷」に戻るかだ。

 アラブ諸国がカタールと国交を断絶したことにより「ハリージ(Khaleejis)」と呼ばれる湾岸諸国の人々の多くが影響を受けているが、航空技師を目指して勉強をしているラシェドさんもその一人だ。

 カタール断交は人道問題の兆候を示し始めている。ラシェドさんはAFPに対し「一般市民は今回の措置とは何の関係もない。理不尽だ」と話した。ラシェドさんは人生で4回しかバーレーンを訪れたことがない。バーレーン人の父親とカタール人の母親は、ラシェドさんが6歳のときに離婚。バーレーン国籍を持つラシェドさんは、母と2人の姉妹と共にカタールの首都ドーハ(Doha)でずっと暮らしてきた。「故郷とは、自分の心のよりどころ。私の心のよりどころはカタール。ここが故郷だ」

 今月5日、サウジアラビアやバーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)などのアラブ諸国は「テロ支援」を理由にカタールとの国交断絶に踏み切った。各国はカタール航空(Qatar Airways)の乗り入れを禁止し、カタールと唯一陸路で接するサウジアラビアは国境を封鎖した。さらに湾岸諸国は自国内のカタール人に対し14日以内の出国を命じると同時に、カタールにいる自国民に帰国を要請した。

 これまで湾岸諸国のうち6か国間では、どこにでも居住、勤務、渡航する自由を認められていたが、カタール断交によって、家族がありえない方法で引き裂かれる恐れが生じている。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は以前から移民労働者の雇用環境をめぐってカタール政府を批判してきたが、今回のカタール断交に巻き込まれて「胸が張り裂けるような思いと不安」に苦しめられるのは一般庶民だと指摘し「サウジ、バーレーン、UAEはカタールとの対立の下で何万人という湾岸住民の生活をもてあそび、家族を離散させ、人々の暮らしや教育を破壊している」と非難した。

 湾岸諸国は血縁や文化・歴史的遺産、通商などによって強く結びついているため、数万人が影響を受ける可能性があり、ラシェドさんのように多くの人々が厳しい選択に直面している。ラシェドさんは、もしカタールにとどまればバーレーン国籍を失い「無国籍」状態になる恐れがあると言う。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、カタールの法律では母親の国籍は子どもには認められておらず「たとえ無国籍になるとしても例外はない」。

 カタール国家人権委員会によれば、同国に滞在しているサウジアラビア、バーレーン、UAEの出身者は1万1382人。また、この3か国の出身者と結婚しているカタール国民は6500人前後に上る。

 サウジアラビアとバーレーンは11日、影響を受ける自国民向けのホットライン開設を発表した。さらにサウジアラビア政府は、家族で国籍が異なる人々を救済する「適切な措置」を講じるとしているが、詳細はほとんど明らかにしていない。

 一方、カタールはラシェドさんとその姉妹のように、アラブ諸国出身者はドーハに引き続き滞在可能だと発表している。

 だが、ラシェドさんの場合、父親の祖国バーレーンに戻らなければ無国籍になるかもしれないという懸念は消えない。ラシェドさんの母親は神経外科医で、1日に6~8時間の手術をこなしているが「こんなに気をもんでいる母は見たことがない」とラシェドさんは語った。(c)AFP/David Harding

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