【6月2日 AFP】野原で草を食んでいるヒツジは穏やかそうに見えるかもしれないが、その顔つきから多くのことが分かる可能性があるとする英科学者チームの研究報告が発表された。チームは、ヒツジが痛みを抱えているのか、それとも単に悲しく感じているだけなのかを解き明かすための分析ツールを開発したという。

 この分析法は、獣医師らが収集したヒツジの写真500枚に基づいている。英ケンブリッジ大学(Cambridge University)の研究チームは、ヒツジの表情に関する5つの重要な指標を測定するアルゴリズムを設計するためにこれらを利用した。

 研究チームによると、ヒツジが痛みを抱えている場合、目がつり上がり、頬がすぼまり、耳が前に倒れ、唇が下がって後退し、鼻孔がU字型からV字型に変わるという。

 研究チームは今後、この手法をウマ、ウサギ、一部のげっ歯類などを含む他の動物種に拡張したいと考えている。また飼育施設の中にカメラを設置することで、農場経営者らが外傷や病気を早期に発見し、最適な治療法を施す上で、このテストが助けになることにも期待を寄せている。

 研究を率いたピーター・ロビンソン(Peter Robinson)教授は、「進化論を唱えた英国人学者チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)によって、動物の顔に関する数多くの初期研究が行われている。ダーウィンは、人と多くの動物は、非常によく似た振る舞いを通じて感情を表すことを主張した」と述べている。

 ロビンソン教授の同僚のマルワ・マフムード(Marwa Mahmoud)氏は「ヒツジの顔と人の顔の筋肉に関しては、類似点がある」と話し、「だが、機械学習モデルでヒツジの顔を『標準化』するのは難しい。ヒツジの顔は、横から見たのと正面から見たのとではまったく違うし、ヒツジにポーズの取り方を教えることも不可能だ」と指摘した。

 研究チームは現在、データセットを拡大し、より精度を高めたいとしている。

 他方で今回の研究プロジェクトには、個人的な効果もあるようだ。

「私は田園地方をたくさん歩き回っており、このプロジェクトに取り組んでから、気がつくと立ち止まって、ヒツジに話しかけ、機嫌が悪くないか確かめていることが多くなった」と、ロビンソン教授は話した。(c)AFP