【4月21日 AFP】体毛がほぼないように見えるハダカデバネズミには、酸素が乏しい環境において体内の糖をエネルギーに代えるユニークな能力が備わっているとする研究論文が20日、発表された。将来的には、心臓発作や脳卒中の患者の治療の一助となる可能性があるという。

 米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された論文は、人では数分で絶命してしまうほど酸素量が低い状況においても、ハダカデバネズミは、最低5時間は生存し続けることが可能としている。

 そのような状況でハダカデバネズミは、植物のように静止し、果糖をエネルギーに代えることで、脳細胞を死滅させることを防ぐのだという。

 米シカゴ(Chicago)イリノイ大学(University of Illinois)のトマス・パーク(Thomas Park)教授(生物学)が主導した論文によると、ハダカデバネズミはいわゆる「冬眠状態」に入り、酸素が回復するまで果糖を使って生命を維持するのだという。この間は、ほぼ動かず、心拍や呼吸も低下する。通常の毎分約200回の心拍数は、同50回程度にまで急減するとされた。

 研究者らがこのプロセスを人にも活用できれば、心臓発作や脳卒中を発症して呼吸することができない患者の命を救う一助となる可能性がある。

 共同執筆者で独ヘルムホルツ協会(Helmholtz Association)マックス・デルブルック分子医学センター(Max-Delbruck Center for Molecular Medicine)研究員のゲーリー・ルウィン(Gary Lewin)氏は、「脳梗塞や脳卒中を起こした患者は、数分間の酸素不足によって取り返しのつかない損傷を受ける」と述べた。(c)AFP