【3月14日 AFP】ポルトガルで発見された40万年前の頭蓋骨は、旧人類ネアンデルタール(Neanderthal)人の祖先に当たる可能性のあり、この人類種に関する有望な手がかりを提供しているとの研究結果が13日、発表された。見つかったのは頭蓋骨の半分のみだ。

 査読学術誌の米科学アカデミー紀要(PNAS、電子版)に掲載された研究論文によると、アロエイラ(Aroeira)洞窟遺跡から発掘されたこの化石は、ポルトガルでこれまでに発見されたヒト頭蓋骨の化石としては最古級のものだという。

 だが、この頭蓋骨をめぐっては数多くの謎がある。頭蓋骨の持ちが男性のものなのか女性のものなのか、どのようにして死亡したのか、さらにはどのような種類の初期人類なのかすらも分からない。

 論文の共同執筆者で、米ニューヨーク(New York)州ビンガムトン大学(Binghamton University)の人類学者のロルフ・クアム(Rolf Quam)氏は、AFPの取材に「これらの化石がどの種に相当するかについては、不明な点が数多くある。私は、ネアンデルタール人の祖先であるとの考えに傾いている」と語る。

 クアム氏は、「これは、ネアンデルタール人そのものではない」として、耳の近くにある「乳様突起」と呼ばれる骨の突起部などの「後のネアンデルタール人と関連していると思われる特徴をいくつか有している」と指摘した。

 研究者らによると、この骨は耳内の圧力の調節に関係している可能性があるが、正確な用途は不明だという。

 骨の形成に基づいて断定できるのは、頭蓋骨が成人のものであることだ。頭蓋骨とともに発見された数個の歯は、子どもではなく大人の歯であるかのように、摩耗の跡がみられる。

 また、頭蓋骨の年代は、周囲の石筍と堆積物の精密な年代測定に基づき、40万年と判明した。

 ポルトガルの頭蓋骨には、スペイン北部で出土した約43万年前の骨と、仏南部で出土した、それよりさらに時代をさかのぼる45万年前前後の骨とに共通してみられる特徴がいくつか見られた。

 ポルトガル人考古学者のジョアン・ジルヤオ(Joao Zilhao)氏と共同研究者らと論文を共同執筆したクアム氏は「人類学の論文では現在、これらの化石を何の種と呼ぶべきかをめぐって多くの議論が交わされている。あまり意見の一致はみられていない」と述べた。