【3月7日 AFP】世界保健機関(WHO)は6日、5歳未満の子どもの死の4分の1以上に汚染などの環境要因が関連しているとする報告書2通を発表した。

 報告書は、屋内外の汚染、受動喫煙、安全でない水、衛生不良などの環境リスクが原因で、生後1か月から5歳未満の子ども約170万人が毎年死亡していることを明らかにした。

 子どもへの有害な影響は、母親の胎内ですでに始まっていると考えられる。これにより未熟児出産のリスクが増え、生涯にわたる健康問題が引き起こされる恐れがある。また、子どもが大気汚染物質にさらされると、ぜんそくなどの慢性呼吸器疾患の他、心臓病、脳卒中、がんなどの発症リスクが生涯にわたって高くなることもあり得る。

 今回の最新報告書は、特に社会の最若年層が直面するさまざまな脅威を浮き彫りにしている。

 WHOのマーガレット・チャン(Margaret Chan)事務局長は、声明を発表し、「汚染環境は、特に低年齢の子どもにとって致命的な脅威となる」ことを指摘しながら、「臓器や免疫系が発達途中にある子どもたちは、体と気道が小さいため、汚れた空気や水に対して著しく脆弱である」と説明した。

 WHOの報告書は、大気汚染や受動喫煙に起因する肺炎などの呼吸器感染症で、5歳未満の子どもが毎年約57万人死亡していることを明らかにした。また、浄水を利用できず、不衛生な環境で引き起こされる下痢では同36万1000人。中毒、落下、溺水など不健全な環境に関連する不慮の外傷では同20万人が死亡しているという。

 下痢、マラリア、肺炎などによる子どもの死の大半は、環境リスクを減らすことで回避できると、WHOは強調する。安全な水やクリーンな調理用燃料の利用、含鉛塗料など危険な建築資材の撤廃、有害な農薬や化学物質の使用削減といった努力は、こうした死を食い止めるのに大いに貢献する可能性がある。毎年20万人に上るマラリアによる5歳未満の子どもの死は、蚊の繁殖地を減らす、飲用水の貯水槽に覆いをする、といった行動を通じて回避できるとみられている。

 ただ、その一方で不要になった携帯電話などの電気電子廃棄物の堆積量の急増といった新たな環境危険要因も次々と出てきている。電気電子廃棄物の蓄積量は、2018年までに全世界で5000万トンに達すると予想されている。

 こうした廃棄物に適切な再生処理を施さなければ、肺に負担をかけ、がんを引き起こす有害物質に子どもたちがさらされる恐れがあるとWHOは警告する。これらの有害物質をめぐっては、子どもの知能にも影響があるとされる。

 気候変動もまた、子どもたちの死にリンクしていると報告書には記された。WHOによると、二酸化炭素(CO2)濃度の上昇は花粉増の一因となるため、これが若年層のぜんそく発症率の上昇を引き起こしているのだという。(c)AFP